ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

地方新聞再生のための10の提案


創刊150周年の55日前に廃刊となったアメリカの伝統ある地方紙「ロッキーマウンテン・ニュース」最後の編集長兼発行人であるジョン・テンプル氏の特別寄稿が朝日新聞社ジャーナリスト学校が発行している「Journalism(ジャーナリズム)」9月号に掲載されていました。
タイトルは「なぜ、ロッキーマウンテン・ニュース紙はつぶれたか」。非常に興味深いレポートなのですが、その中でテンプル氏は「新聞業界が心躍るような解決策を出してくれるとは、とても思えない」「生き残って行くには、劇的に自己改新をしなければならないと、私は思っている」と下記のような地方新聞再生のための10の提案をしています。

  1. まず、顧客(読者と広告主)から始めよう
  2. 明確で信頼できる公共サービスの使命を確立しよう
  3. 編集、広告、マーケティングはパートナーである。地方新聞の社内業務を再編しよう
  4. 案内広告を分離し、単独のビジネスとしよう
  5. 地方紙を経済活動の場にしよう
  6. 広告の掲載方法を刷新しよう
  7. 既存モデルの発想から脱却しよう
  8. 新聞社のスタッフの手になるもの以外は、不良品と考えることをやめよう
  9. 小出しのコストカットをやめよう
  10. 万人のために何でもできるなんて考えることはやめよう

アメリカとは社会における位置づけや資本構成が違いますが、日本の新聞にも参考になるはずです。テンプル氏も寄稿の中で「新聞の編集者が事態をさらに悪くしていると思う。彼らは、まるでラジオやテレビ、そしてさらに重要なインターネットが存在しないかのような感覚で新聞をつくっているからだ。読者がすでにテレビやウェブで知っているかもしれない出来事を、一面のトップ記事にしている例が多い。日本でも、同じことがおきていないだろうか」と問うています。

ちなみに9月号の特集は「広告はどこへ行った」。トヨタの宣伝部長が語る、減少する新聞広告とウェブの将来性というインタビューでは、トヨタの新聞への広告出稿は構成比で2003年度は30%あったものが、08年度は17%になっていることが明かされています。ウェブの構成比は5%だとか。インタビュアーが新聞広告がなくなったらクライアントとしてどうかと聞いたことに、「お客さんが痛痒を感じるかどうかです。広告が出すほうが考えてもしかたがありません。お客さんが困らなければ、僕らは何も困りません。」と答えるなど、なかなか面白い内容になっています。寄稿、宣伝部長インタビュー双方に共通するのがコミュニケーション、コミュニティという言葉であることも注意しておきたいところです。
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