「ジャーナリストへの挑戦、記者と学生の127日間」が終わりました
大事なことは「ワクワクすること」。大学生向けのジャーナリスト育成プログラム「スイッチオンプロジェクトの成果発表と修了式が8月1日に行われました。「ジャーナリストへの挑戦」というタイトルは、学生はもちろん、学生と記者、そして記者自身が、ジャーナリスト(という存在やあり方)に挑んできたことを表しています。
合宿から127日、スイッチオンという企画と名前がついた会合から九ヶ月、メディアや組織、社会人と学生の枠を超えて、書くスキル、表現することを学ぶ、実験的なプログラムは最後までたどり着くことが出来ました。
ボランティアどころか運営費を負担してまで参加した15人のデスク、献身的に活動を支えた学生運営委員、記事の掲載や会場提供、広報活動に協力していただいた方々、何よりも実績も形もないこのプロジェクトに飛び込んでくれた参加学生の皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。企画を率いてきたプログラムディレクターとしては反省も多く、課題も残りましたが、とても楽しく、充実した時間を過ごすことができました。
2008年10月9日東京ミッドタウンのスターバックス。河北新報の寺島英弥さんとの会話からこのプロジェクトは走り出しました。新聞だけでなく、テレビや雑誌、ネットで活躍する記者や編集者が、組織や媒体の枠を越えて集い、切磋琢磨する、「ジャーナリストが学びあう「場」をつくろう」というアイデアを話すと、寺島さんは「ワクワクするね。とにかくやって見よう」と背中を押してくれました。
趣旨に賛同するデスクが集まり、日経メディアラボの坪田知己さんからスイッチオンを取材するというアイデアが出され、公募の結果41人の参加者が決まり、合宿に入りました。その後も山や谷があり、脱落する学生も出ました。ある班ではメーリングリストの投稿数が1000本以上にもなり「深夜にも携帯のメールがなり続けて見るのも嫌になりそうになった」と言っていました。それだけに、苦労を乗り越えて、修了式までたどり着いた学生とデスクの顔は晴れやかでした。
修了式では、各賞の発表(参考・スイッチオン賞、gooニュース賞など受賞作品決まる)の後、成果発表を見に来て頂いた皆さんにもプログラムの一部を体験してもらおうと「他個紹介アクティビティ」を行いました。これは合宿で一番最初に行ったワークショップでもあり、参加学生にとっては懐かしかったのではないでしょうか。
インタビューをして相手にニックネーム(キャッチコピー)をつけて紹介するというのは単純そうですが、面白いニックネームをつけるためには、相手の話を聞き出し、特徴をとらえ、それを整理してひとことで表現しなければなりません。短時間ですがジャーナリストの基本的なスキルが詰め込まれ、学ぶことができるアクティビティです。
第二部では、東海大学文学部広報メディア学科の河井孝仁准教授を司会に、デスクの講談社ジャーナル・ラボ部長の戸塚隆さん、テレビ局勤務の大野伸さん、ライター/エディターの野田幾子さんがパネル討論を行いました。
戸塚さん「企画書を作る、骨組みを考えるところから始めた。文章を書くのも、家を建てるときに、土台があって、屋根があって、柱があってというのと同じ。構成力を実践的に学べたのではないか」、大野さん「デスクに企画書や原稿を崩されても立ち向かってきた学生が残った。プライドが高すぎると、崩されたときに許せなくなる。どれだけ勉強するのか、デスクや自分に向き合うのか、それが大事だ」、野田さん「ジャーナリストを表現者と意味づけていたこと。実践的なこと、この二つが魅力的だった。人に教えるということを通して、自分のアプローチや手法を見つめることができた」などと、プロジェクトの成果や参加理由について意見が交わされました。
閉会の挨拶で、毎日新聞の磯野彰彦さんが「面白そうだから参加した。デスクが組織の枠を超えて参加しているというのはすごいこと。物事を伝える技術の底上げをしなきゃいけないと思っていた。どこまで出来たかは分からないが第一歩は踏み出した。修了生が何らかのかちで、取材をして、文章を書いて、伝える、ことに関わってくれると大変うれしい」と締めくくってくれました。
事前に挨拶を打ち合わせたわけではありませんが、ワクワクで始まり、面白いで終わることが出来ました。参加学生、運営、デスクがワクワクしていないと意味はありません。
スイッチオンは継続することになりそうです。が、来年夏に大学生向けの合宿をやることぐらいしか決めていません。質疑でもありましたがこのプロジェクトは、誰かが何かをしてくれるのではなく、自ら手を動かしていくものです。アイデアがある方、一緒にワクワクしたい方がいれば、一緒に創っていきたいと思います。運営委員、デスクだけでなく、連携するメディアや研究者、ゼミなども歓迎ですのでご連絡ください。よろしくお願いします。
会場にはgooニュースへの掲載作品やこれまでのプロジェクト経過も展示しました。
成果発表の後には修了式が行われ、一人ひとりに終了証が手渡されました。
栄えある第一期生とデスク、運営委員。
- twitterでtsudaられた成果発表のログは#switchonpjtで見ることが出来ます。
【参加学生が書いた記事23本の一覧】
- スイッチオン賞 「民族のために死んではいけない」在日コリアンの選択(金瑞香・立教大学)
- gooニュース賞 宮崎駿を見出した男・スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫に会いに行く(上) 「ペタッペタッ」とやってきた
- 宮崎駿を見出した男・スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫に会いに行く(中) 編集長も社長も面倒くさい
- 宮崎駿を見出した男・スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫に会いに行く(下) 宮崎駿に先回りしたい
- 運営委員賞 知られざる“紙フェチ”、紙本保存修復家・坂本雅美(善名朝子・筑波大学)
- プログラムディレクター賞 働くって何ですか、「みんなの就職活動日記」を立ち上げた、伊藤将雄さんに聞いてみた(新田麻里奈・武蔵野大学)
- 「嫌われてもいい」生きる可能性を伝える、高校教師・金子潤 (小林明日香・国際基督教大学)
- 「革命」を求め続けて40年、立教大学教授・尾崎新(青木彩香・立教大学)
- 眼が壊れても描けるものがある、絵本作家・いせひでこの世界(五十嵐朋子・早稲田大学)
- 新聞が生き残るために「コツコツやる」が主役になる。校閲記者・平山泉(斎藤沙帆里・立教大学)
- “いやいや事務局長”井澤トモヒロ、日本を変えるリーダーを作る(田中絢子・立教大学)
- ぬるま湯日本では世界に勝てない〜松下浩二がプロを貫く理由(北村慶一・慶應義塾大学)
- 最後につかんだ102通の「ラブ・レター」、環境問題を考える大学生・菊池圭太郎(藪崎麻美・明治大学)
- 四季を身にまとい芸に生きる、博士が日本で芸者を続ける理由(飯塚一平・明治大学)
- 局アナ界のニュータイプ、「ヲタクアナウンサー」吉田尚記(大橋美蘭・立教大学)
- 内臓を踊る。驚異のダンサー 森山開次(武藤あずさ・早稲田大学)
- 滑る喜びを噛みしめて「忘れられないスケーターになりたい」鈴木明子(地曳彩香・明治学院大学)
- 私は「ゴミの子」!普通の大学生がゴミを拾うワケ(須藤智美・国際基督教大学)
- 日本人の思考停止を再開させたい、共犯者への招待状「GENERATION TIMES」編集長・伊藤剛(本橋優穂・東京学芸大学)
- 大学3年生の「私」に足りないことを見つけるため「知的美人」と旅に出た(川添真美・立教大学)
- 「人生ガバッと変わっちゃった」83歳の映像プロデューサー・原田幸一さん(石塚忠宏・東京大学)
- 「ネットは匿名ではない」、なぜ大学准教授は実名ブログを運営するのか(福井里奈・駒澤大学)
- 「月に行くには太陽に行くつもりでやればいい」NPO法人KOMPOSITION代表理事・寺井元一(田村昭彦・成城大学)
- 賛成でも、反対でもなく、原子力の「そのまま」を ドキュメンタリー映画監督・鎌仲ひとみ(工藤翔子・国際基督教大学)
- 一期一会は成長へのスイッチ、一度「死んで」たどりついたこと(秋谷真理・東海大学)
【関連エントリーなど】
- 「ジャーナリストへの挑戦、記者と学生の127日間」を終えて。(学生運営委員のブログ)
- メディアの人から学んだこと「ジブリ鈴木敏夫インタビュー」ができるまで(gooニュース賞受賞者・佐藤さんのブログ、記事が出来るまでの流れがまとめられています)
- 大学生向けのジャーナリスト育成プログラムをスタートさせます(プログラムの趣旨はこちらをお読みください)