ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

情報通信学会の発表がtudaられ→J-CASTされる

第26回・情報通信学会大会の情報通信学会の「第26回学会大会」「間メディア社会におけるジャーナリズム」でのミドルメディアの構造やメディア「間」の共振や影響のあり方とジャーナリズムの関係などについての発表内容が、会場に来ていた敬和学園大学の一戸信哉准教授にtudaられ(Twitterでイベントなどを生中継すること)→J-CASTされました(ミドルメディアに取り上げることをこう呼ぶのはどうでしょう。影響力が大きくなると「フライデーされる」のように使われるようになるかもしれません…)。

発表は、学習院大学の遠藤薫教授と私、司会は東京大学の木村忠正准教授。
遠藤教授は「インターネットと世論形成−間メディア的言説の連鎖と抗争」(2004年出版)や「間メディア社会と“世論”形成―TV・ネット・劇場社会」(2007年出版)で、複合的なメディア環境において相互作用する「間メディア」という概念を打ち出しています。
学会の発表が断片的にTwitterでつぶやかれ、それがミドルメディアにまとめられる、さらにソーシャルブックマークやブログに言及される、というのが「間」メディア状況を示していますし、そもそもミドルメディアという概念を世に出したのも、J-CASTニュースのことも取り上げている2006年11月の日経IT-PLUSのコラム "「炎上」の発火源?・マスコミとブログつなぐ新メディアの台頭でした。

学会でも示しましたが、私が発表時に利用したメディア「間」共振や依存のPPTはこちらです。2006年の記事のタイトル、図と見比べていただければわかるのですが、ミドルメディアが「つなぐ」という部分を強調したものから、マスメディア、ミドルメディア、パーソナルメディアが相互作用している図に変わりました。

マスメディアからパーソナルメディア、また逆に、パーソナルメディアからマスメディアという流れを作っているのではなく、話題は三つのメディアレイヤーを行き来しながら広がったり、変化したり、していきます。今回のケースでも同様です。

学会の発表

Twitterでつぶやかれる(パーソナルメディア)

J-CASTニュースがまとめる(ミドルメディア)

ブックマークのコメントやブログ(個々はパーソナルメディア)

はてブホットエントリー(ミドルメディア)

問題は、学会というパッケージ化された場所での発表がTwitterのつぶやきで発信されることによって、断片化、アトム化することでしょう。ただ、これは「ネットになったから」ではなく、リアルの口コミや新聞や雑誌の記事でも、講演の一部を切り取って記事を書いたりすることもあるので、人が関わり編集される以上、避けられません。違うのはそれがリアルタイムに、場合によってはすごいスピードで伝播する可能性があるということです。
例えば、今回 Q:ネット右翼をどうとらえるか? という質問があり、一戸さんのTwitterでは、藤代:先行研究がたしかあった。ネット右翼はそんなに活動しないといわれている。NHKへの集団訴訟で動いているのも、たぶん本物の右翼だろう。
となっているのですが、もう少し正確に言えば「辻さん(辻大介大阪大学准教授)の研究では、サンプル数は少ないが、傾向としてネット右翼は非常に少ないというデータが出ていたはずです。ネットの人たちはあまりリアルでは動かないとも言われており、NHKの問題で行動しているのはリアル右翼ではないか。それよりも、ネット右翼が原因とマスメディアが騒ぐことで、騒ぎが大きくなり…」と続いて、藤代:そこにマスメディアが燃料投下したとみるべき場面もあるだろう。の発言につながっていきます。
参考・インターネットにおける「右傾化」現象に関する実証研究

知見の概要
ネット右翼」について一般に指摘されることの多い特徴をもとに、次のa)〜c)の3条件によって「ネット右翼」的な層を操作的に定義した。その比率は、本調査の有効サンプル数の1.3%であった(全998人中の13人)。ただし、今回の調査サンプルにはインターネットのヘビーユーザが多いという偏りがあるため、一般的なインターネット利用者における比率は、1%を下回るものと推測される。

これが良い、悪いというのではなく、メディアがどのような構造になっており、特徴はどこにあるかを考えていくことが重要です。