ガ島通信

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ブログ中傷、単に個人のリテラシーを求めるだけでは解決しない

タレントのブログ「炎上」にからみコメントを書き込んだネットユーザーが名誉毀損で摘発されたのを受け、日経IT-PLUSのコラムに書いた「ブログ中傷、罪を問う前にやるべきこと」にブックマークやブログでいろんな意見を頂いてます。言葉が足りなかった部分もあり、いくつか誤解を生んでいるところもあるので補足します。
自分自身もコメント欄への執拗な書き込みに悩まされたことがあるので、被害に対抗・回復していく難しさ、コストについては理解しています。セミナーなどでブログを書く際に注意することを聞かれたら、「(法律を守るのはもちろん)リアルで面と向かって言えないことは書いてはいけない」と言い続けて来ました。それでも安易な規制強化な捜査拡大には慎重になるべきと考えています。

コラムにも書いたように、ネットの仕組みに詳しい人はネットの匿名性など怪しいと思っているし、昨年から犯行予告の摘発などが相次ぎ、以前は警察が手続きを行わなければならなかったプロバイダーからの情報開示も進んでいることを考えると(プロバイダー側から警察に通報するように要請している)、普通に考えれば問題がある書き込みをしないでしょう。ネットがリアルの一部でしかないことを理解している人も同様です(ブログの初期のころに、そういう意見を言うとリアル派などと批判されたことを思い出します)。

炎上などに加担したり、悪質なコメントを書き込んだりしているのは一部のユーザーで、多くのユーザーが普通にネットを活用してマナーを守っています。にもかかわらず「当たり前」が分からず、誹謗中傷などを書き込んでしまう事案は後を絶ちません。今回の事件で摘発された人の多くも「気軽に書き込んでしまった」と供述しているようです。この手の事件があると、よく「個人のリテラシーを高めるしかない」とか「ネットユーザーの自覚が求められる」といった論調がありますが、そのようなネットユーザー個人への取り組みだけでは解決しない可能性があるということです。

そこで少しこれまでと考え方を変えて、多くの人が理解できることを「当たり前」と思えない人を情報弱者ととらえ、そこを教育でサポートすることでリテラシーを底上げし、「当たり前」のことが理解できる人を増やしたほうが、被害も減るのではないかと考えて見たのです。
犯罪を犯した人が「知らなかった」と言ったところで、その罪から逃れられる訳ではありませんが、罪になるということを広く知らせることに取り組んでみるのは決してマイナスではないはずです。ネットのマナーは学校や家庭、または職場で、改めて学ぶ機会もないですし、組織的なサポートはほとんどありません。また、ネットの事業者側もほとんど手をつけて来ませんでした。マナー教育を受けたユーザーのブログや書き込みはIDの評価を上げるといった事業者によるポジティブな取り組みは、良いユーザーが集まるコミュニティを作る可能性がありますし、サービスの差別化としても有益なのではないでしょうか。

個人が被害に遭った際の問題はコラムでは議題に上げていませんが、個人が気軽に情報発信出来るマイナス部分として、簡単に誹謗中傷に巻き込まれてしまいます。ブログや掲示板サービスへの書き込み削除や情報の開示、また検索エンジンへの対応、場合によっては弁護士への依頼、警察への相談などを行おうとすると、途方もない労力がかかり、泣き寝入りしてしまうことも多い現実は理解しています。
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