ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

クチコミは誰のものか「WOMマーケティング協議会設立準備会」の発足にあたって

CNETITproなどで既に記事をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、クチコミ(WOM:Word of Mouth)市場の健全な育成、情報共有などを目的とする団体の設立を目指してWOMマーケティング協議会設立準備会(WOMJ)が発足しました。趣旨に賛同している発起賛同人は、24日までで81人と1グループ。広告代理店やPR会社だけでなく、ウェブサービス、研究者、ジャーナリスト、個人、幅広い方が参加しています(発起賛同人は引き続きウェブのフォームより募集しています)。
会の世話人をやっていることもあり、ニュースを見た方から、「誰のための団体なのか」「発起賛同人の中にWOMマーケティングの理念を理解していない人もいるのでは」といった反応も頂きました。人によってクチコミマーケティングの捉え方も異なりますので、「あまり関係なさそう」という声もありましたが、幅広い業界、関心を持つ人々で、事例や課題について考える「場」が必要なのではないかと考えています。
従来の一方通行のメディア上で行われるマーケティングでは、発信・受信の区別が比較的明確なのですが、ブログやSNSといったソーシャルメディア時代が到来して、メディア状況が大きく変化しました。誰もが情報発信できるだけに、「クチコミは誰のものなのか」と考えてみると、ユーザーのものでもあり、サービス事業者のものでもあり(価格コムなどのクチコミサイト)、企業のものでもあったり(企業ブログ)、あいまいさが一層増すことになります。このステークホルダーの多さが、面白さでもあり、混乱を引き起こす原因でもあります。
ブログと出会い個人の情報発信の可能性と課題・問題点という観点から、メディアやジャーナリズム同様、クチコミにも注目してきました。2006年にはアメリカのWOMMAサミットに参加、WOMMAの倫理規定なども稚拙な邦訳ですが紹介してきました。

ウェブログ・ハンドブック―ブログの作成と運営に関する実践的なアドバイス
倫理規定やガイドラインというと、PR会社や広告代理店、クライアント企業といった業者側が守るものというイメージがあるかもしれませんが、企業や企業と消費者とむすぶ広告代理店やPR会社だけでなく、ブロガーやSNSユーザーにも関係しています。
レベッカ・ブラッドの「ウェブログ・ハンドブック―ブログの作成と運営に関する実践的なアドバイス」(邦訳は2003年12月に発売)では、従来のマスメディアにはないブログの自由さが健全性を危うくすること、権利は責任と結びついてきたなどとして、あらゆるオンラインパブリッシャーが守るべき倫理基準が提案されています。また、Web2.0の提唱者ティム・オライリーが、ブロガー自身による行動規範「Blogger's Code of Conduct」作りを呼びかけたりもしています。記事を書く際にお金や商品をもらっているのを明示すべきかどうか、などは日本でも議論があります。
ブロガー側に限らず、WOMMAが定めているようなマーケターや事業者側はどうなのか。効果測定はどうなるのか(ブログエントリーが何個あったというのでクチコミを計測できるのか、ネットのクチコミから評判などを抽出するサービスもありますが、そのブログにスパムなどが入っていたらどうなるのかなど)など、いろいろ課題がありそうです。
発起賛同人は、いまのところ事業者が多いですが、クチコミは皆のものだから、WOMJがブロガーやマーケター、クライアント、研究者などがそれぞれの課題や問題を持ち寄って解決するような「場」になっていけばいいと思っています。
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