ガ島通信

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原子力発電を題材にします

北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)選科Bの後期授業では、原子力発電を題材にしており、北海道電力泊発電所を見学することにしています。
被爆国であることもあり「原子力」に対して敏感で、事故があればニュースで大きく扱われます。原子力発電の必要性に疑問を呈する人もいますが、原油高騰や温暖化対応のためヨーロッパなどでは見直されているという報道もあります。6月には、G8と中国、インド、韓国を加えたエネルギー相の会合があり、原子力発電に関心を持っているということを盛り込んだ「青森宣言」を採択しています。原子力は時代によって、個人によって評価が揺れる難しい題材です。
なぜ、このようなセンシティブな題材を扱うのか。それは科学を扱う記事には現時点で評価が難しいものが多くあるからです(参考・北海道新聞「常温核融合記事」の問題点)。原子力発電に限らず、反対・賛成といったフレームをあらかじめ決めてしまうと楽かもしれませんが、それでは見落としてしまうことがあります。出来る限りフラットに見た上で、評価が人によって異なる場合にどのようなことに注意するのか、制限が多いでしょうが発電所見学を通じて受講生が学ぶことは科学技術コミュニケーターにとって、ジャーナリストにとって重要だと考えています。

授業では、受講生の皆さんに「原子力発電の仕組み」「泊原発の概要」「原子力発電の歴史と現状」「日本の発電事情」について発表してもらいましたが、比較的バランスが取れたもので各自が考えていくベースになったと思います。
受講生の皆さんが、どのような関心を持って見学に望むのか楽しみです。発電所や見学そのものに注目する人もいれば、取材のひとつの素材とする人もいるでしょう。
私自身、原子力発電について詳しいわけではありませんので、受講生の皆さんに負けぬよう出来る限り勉強して見学に望みたいと思います。書くプロセスは、仮説、取材や調査、再構築の繰り返しです。取材に行くと自分の頭の中で考えていたことと、まるで違っているということもあります。それも、面白さであり、難しさです。大切なことは決して自分の頭で考えたフレームを押し付けて、そのフレームのまま事象を切り取らないことです。