ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

朝日新聞と読売新聞が印刷を相互委託へ

新聞業界にとっては結構大きなニュースではないかと思います。
朝日・読売が印刷を相互委託へ…千葉と香川で(読売新聞)
朝日・日経・読売が協力、災害時にも発行継続(朝日新聞)

ANYと呼ばれる朝日・日経・読売連合が提携を発表したのは昨年の10月1日。朝日・日経・読売、業務提携の意味

新聞社のコアである編集部門(それが劣化しているのがまた問題ではあるが)を残しながら、業務を効率化していくとなれば、販売だけでなく、印刷や輸送、新聞制作、広告、事業など様々なところにメスが入っていくことが予想されます。

と指摘しましたが、1年で印刷の相互委託まで進んだのは、危機感の現われと言えるでしょう。
新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書)
元毎日新聞常務の河内孝氏は著書「新聞社―破綻したビジネスモデル」で、『金額的に最大の合理化メリットが出るのが印刷部門』と指摘しながら、『もめそうなのは、「どの新聞を最後に刷るか」です。印刷する時間が遅いほど新しいニュースが入る、という理屈を編集局が主張しそうです』と書いています。
他業界だけでなく、新聞社の一部の人から見ても「もっとも効果的」な印刷の相互委託ですが、河内氏が指摘する「ギリギリまでニュースを入れたい」という意識だけでなく、スクープ・特ダネを書いたときに印刷工場で情報が漏れてしまうのではないかという心配、また労働組合による「印刷工場も新聞ジャーナリズムを支えている」という理論などが絡み合い、なかなか進んでいませんでした(全国紙と地方紙の相互委託は進んでいる)が、そんなことは言ってられない状況になってきたのでしょう。

当初は、読み比べサイト「あらたにす」に注目が集まっていましたが、オープン時にブログで指摘したように『業務効率化のために歩調を合わせていくための「踏み絵」』であり、接着剤として数億の投資であれば安いコストです(あらたにすをビジネス化しようとする考えがあるなら別ですが…)。

今後、三社による業務効率が進むとして、気になるのは毎日新聞と産経新聞の動向です。読売は新聞の段数を15から12段に変えて、広告の大きさを変更。同じフォーマットにあわせるよう地方紙に呼びかけたりもしています。
読売・朝日・日経連合が本気で毎日新聞潰しに!サイゾー
また、地方紙でも夕刊を廃止するところが出始めています。
これまで横並びだった新聞業界ですが、ここ数年の経営判断によって将来大きく差が付きそうです。