ガ島通信

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「ちょっと背伸びをしてみよう」キャリア形成について講義しました

先日、知り合いの先生に依頼されて愛知県にある豊橋創造大学でキャリア形成について話をしてきました。人に話すことができるような模範的キャリアを歩んでいるとは到底思えませんが、大学生とコミュニケーションできることや自分も学ぶことができるので引き受けました。タイトルは「ちょっと背伸びをしてみよう」です。

一年生ということで、まだ就職や仕事についてリアリティが無いように思えたのですが、皆さんメモを取るなど熱心に聴いてくれました。

仕事やブログ、大手町ビジネスイノベーションインスティテュート(OBII)の活動について自己紹介をかねて一通り説明した後、高校時代に時計の針をまき戻して、大学入試、就職活動、新聞社時代の仕事の内容、転職について話しました。
新卒の採用は回復していますが、大企業であってもリストラがあることもあり以前のように定年退職まで線路が続いている保証はないこと(山田昌弘東京学芸大教授は「希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く」の中でパイプラインが漏れていると説明している」)、グローバリゼーションによって競争相手が世界中に広がっていることなどを踏まえて、これからのキャリア形成に必要な3つのポイントを紹介しました。

  • リスクをヘッジするための「複線化」
  • 自分の土俵で勝負する
  • 得意技を伸ばす

まず「複線化」ですが、パイプラインが漏れているならそのリスクをあるものとして受け止めてヘッジする必要があります。そのために走るべき線路をいくつか持っておくとよいという話です。逆に言えば線路が途中で切れていてもがっかりせずに新たな線路を作るといい。この話は奈良先端大でご一緒したJTPA日本代表の中村孝一郎さんの講演からもヒントを得ました。
自分の土俵で勝負するということと、得意技を伸ばすというのは似ています。キャリアだけでなく恋愛もそうですが、自分の土俵で勝負すると「勝ち」(自身が望む結果)を導きやすいといえます。ただし、自分の土俵に持ち込んでも「得意技」がなければ勝負が出来ないので長所を伸ばす必要があります。
世の中にはすごい人というのはいるもので、卒業大学や所属企業といった経歴は申し分なく、地頭も良くてさらにいい人だったり。それでも一流の人は「自分にないもの」があることを知っているし、一生懸命努力している人を認めてくれるものです。そういう人とコラボレーションするためにも、得意な分野を伸ばしたほうがいいものです(逆に、肩書きだけ見たり、何かに真剣に取り組む人をバカにするような人はいくら社会的に地位があっても、二流、三流だと判断してよい)。
自身の考える能力より少し難しいことにチャレンジすると成長できます。「背伸び」というと否定的な意味を持つことがありますし、失敗すると恥ずかしいと思う方もいるかもしれませんが、つまらないプライドが成長に最も邪魔になります。私自身、大学に入ったことすら「奇跡」と呼ばれたような人なので「ちょっと背伸びをしてみる」ように心がけています、といったことを話しました。

講義の後は、お手伝いしてくれた大学生を交えて打ち上げに行き、楽しく話もできました。大学で若い人と一緒に学ぶことが出来るというのはとても刺激があり、やりがいのある仕事だと思います。チャンスがあれば、私もまたチャレンジしてみたいと思います。

【参考】キャリアについてオススメの本を紹介しておきます。まず基本的な世の中の変化、流れを見るのには、先に紹介した希望格差社会産業再生機構の元COO冨山和彦氏が書いた会社は頭から腐るを読んでおくといいと思います。

会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書)
就職活動を控えた大学生や二十代前半の方であれば、テレビにも出演している経済評論家で楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏の会社は2年で辞めていいが値段も手ごろでいいでしょう。
著者自身が十回以上の転職をした経験などを交え、就職や転職に関する具体的なアドバイスが盛りだくさんです(女性のためのキャリア戦略もあり)。キャリアプランのポイントは28歳と35歳にあり、28までは「職決め」の時期なので試行錯誤の転職もありで、35までに職業人として完成を目指そうと指摘しています。

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保田さんのキャリアから、起業や独立、外資系への転職のことが多く書かれていますが日本の企業で働いている人にも参考になるでしょう。「ホワイトカラーの仕事は非効率と知れ」は目からウロコでした。「優秀な人たちに出会ったときに、彼らと自分との差を覚えておき、その差が広がらないようにする」というのも大事です。

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正社員の削減、成果主義の導入は中間管理職も苦しめています。四十代の取材班が、若手が何に不満を抱いているのか(尊敬できる上司や先輩がいないと言われると…など)、アンケートやインタビューで理解を進めていき、ミドルのあり方を問い直しています。