ガ島通信

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パラダイス鎖国と「そうだ葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生」横石知二

パラダイス鎖国という2005年に海部美知さんがブログで提示したキーワードを自分なりに解釈して日経IT-PLUSに二本の記事を書きました。はてぶでやブログに色々書いていただいたり、個人的にメールを送っていただいたり、色々反応がありました。ご意見を頂いたかたありがとうございます。

二番目の「立ち向かう人たち」では、徳島県上勝町の取り組みを紹介しています。徳島から離れて、徳島のことを書くのはなんとなく不思議な気持ちですが、「ネットにつながる必要もない」を書いた後どんなことを書こうかと考えていたところ、新聞社時代の同期が緑に彩られた山の写真とともに「全戸にFTTHが導入。ニューズウィークの特集・世界を変える社会起業家100人の国内から選ばれた5人のうちの1人がいる。行く度に元気を分けてもらっている」と上勝のことをSNSに書き込んでいた日記がきっかけになりました。
「そうだ上勝があった」と、すぐにメールで連絡を取り、取材を進めていると「そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生」が出ることを知り、吸い寄せられるように上勝のことを書いたという流れです。

そうだ、葉っぱを売ろう!  過疎の町、どん底からの再生

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生


この本「そうだ、葉っぱを売ろう!」には、地域振興や活性化だけでなく、マネジメントや働く意味といった、色々なエッセンスが入っています。行政やNPOの方はもちろん、ビジネスのヒントも見つけることができるでしょう。内容を少し抜粋すると

  • 横石氏は運命的ないきさつで上勝町農協に採用された。「よそ者を入れて税金を使うとは」という反対に、当時の町長は「新しい風を入れんといかん」と反対を押しのけた
  • 男衆は朝っぱらから農協や役場に集まり、国や役場の悪口や愚痴をしゃべり続け、お年寄りは毎日のように診療所やデイサービスに行っていた
  • 農家のお母さんが子供に向かって「勉強せんかったらこの町にずっと住むことになる」という町
  • 「がんこ寿司」にいた女の子グループの会話から葉っぱビジネスが誕生
  • 年間4500時間労働、休みは年に1回あるかどうか、37歳まで給料(手取り18〜19万)は1円も家に入れず転職を考える
  • 辞表に農家から嘆願書、町長の判断で農協から役場への異例の転籍
  • おばあちゃんはパソコンを使いこなしているが導入には苦労、用がない人に渡してもパソコンはただの箱
  • 成功のヒミツは、現場主義、女性と高齢者を主役に、「気」を育てる、仕組みを作る、的を射る・場面をつくる・渦を巻く、人と人の絆

…あとは本をご覧ください。

新聞社時代には地方自治を担当していたこともあり、横石氏と出会うチャンスは今以上にあったはずですが、なぜか出会っていませんでした。その理由を考えていたのですが、私自身が横石氏のような人と会うことを求めていなかった、もっと言えば面白い人や取り組みを見つける力がなかったということなのでしょう。ブログを始めてから特にそうなのですが、会いたいと思っている人には願っていれば会えると信じていて(実際大体会えている)、これからもアンテナを高くして面白い人や出来事と出会えたらいいなと思っています。

この本には、昔はハーフのようで男前だったという横石氏が地元紙のコーナー「ニチヤン」で話題になっていたということが書かれているのですが、この「ニチヤン」が私が新聞社時代に最後に担当して紙面改革をしたコーナー。ほんの小さなことことなのですが、不思議な縁というかつながりを感じました。

来月9日に横石氏と糸井重里氏、マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長による「ITトークショーin上勝」も開かれるとのことなので、取材がてら久しぶりに上勝を訪れる予定です。


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