ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

シンポ「ネット選挙の行く末」無事に終了しました

メディア・イノベーションの衝撃―爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス
メディア・イノベーションの衝撃―爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス」の刊行を記念して行われたシンポジウム「検証:ポピュリズム集合知か ネット選挙の行く末」は、多くの方の協力により、おかげさまで無事に終了しました。足元の悪い中、たくさんの方に集まっていただきありがとうございました。

シンポの模様については、取材に来ていただいたインプレスウォッチの増田記者が「ネット世論に信憑性はあるのか?」インターネット選挙の今後を議論とのタイトルでまとめてくれていますのでご覧ください。それにしても、山口さんの「ネット世論オプティマイゼーション」という言葉はインパクトありました。
会場からは、ネット世論だけでなく、Googleなども含めた情報の集約の危険性、YouTubeなど動画共有サイトを利用した選挙運動など、興味深い質問がありました。ネット世論についてはParsleyさんのブログでも紹介されていますが「ブログは誰でも簡単に出来るもので、どこまで信頼できるのか」という質問に対して、「じゃあマスメディアが作っている世論は本当に信用できるんですか」とマジレス(Parsleyさんによると)したわけですが、情報は常に読み解く側のリテラシーが試されるし、情報というものには必ず発信者側の意図が紛れ込んでいるわけです。

以前からこのブログを読んでいる方ならご存知とは思いますが、新聞やテレビといったマスメディアの主張する「客観性」や「客観報道」というのは非常に怪しい。客観を装って主観を紛れ込ませるというレトリックは存在しますし、会場に来ていただいたFACTAの阿部編集長からも「新聞記者だったから、新聞がいかに世論を操作するか、ウソをつくかを知っている」との発言がありました。

マスメディアに情報の真偽の判断を預けて、責任を回避するのではなく、受け手のリテラシーが重要だと考えています(ただし、情報を伝えるということをビジネスにしているマスメディアの情報にウソや偽りがあった場合は批判されて当然であると考えています。メーカーの製品の質が低かったり、欠陥だったら批判されるのと同様であり、すべての責任が受け手にあると主張しているわけではありません)。

ネット選挙やネット世論については、次の衆院選ではさらに注目されるでしょう。可能性や問題点について、引き続き考えていきたいと思います。


ネットのマスメディアの作り出す世論や影響力について、まだまだ不勉強ですがこれまで読んだ中で参考になった本をいくつか紹介しておきます。「これを読んだほうがいい」という本があれば教えてください(ジャーナリストの森健さんからオススメ本の紹介がありましたので追加しておきます)。

世論〈上〉 (岩波文庫)テレビは政治を動かすか    NTT出版ライブラリーレゾナント022インターネットと“世論”形成―間メディア的言説の連鎖と抗争世論をつくる―象徴闘争と民主主義

  • 世論」(リップマン)世論に関する古典的名作。
  • テレビは政治を動かすか」(草野厚)2005年の郵政解散とテレビの影響力などについてまとめ。新聞のコラムを再録した部分では、ややテーマが拡散している部分もありますが、読みやすいです。