ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

PHP総合研究所「安倍政権を国民が審判する参院選挙−改革を止めるなの後は美しい国でいいのか?−」

マニフェスト評価は3年になる。定点観測をしており、マニフェスト白書も出している。今回の評価ほど頭を悩ましたものはなかった。前回のマニフェストを出した首相は小泉氏で、阿部政権は選挙を経ていない。前政権のマニフェストを継承しつつ、美しい国とのコンセプトを示したのはいいこだが、新しく出ているものをどう評価するか。
美しい国は、国民の正式な承認を得ていない。そこで、われわれは05年に出され「郵政民営化こそすべての改革の本丸である」と訴えたマニフェストを評価し、新しいものについては評価を保留している。
参院選は「美しい国」という安倍首相の新しい方針を問う。ここからマニフェストサイクルに入ると考えられる。有権者が注意するべきなのは、自分たちが支持した(支持しない人もいるでしょうが…)、郵政マニフェストが履行されているか、そしてその次が美しい国でいいのかということ。野党は、小泉、安倍政権に対案を出していく必要がある。国づくりに新しいコンセプトが必要なら「美しい国」に対抗するコンセプトを出さねばならない。

「安倍内閣の政権運営に関する実績評価」は、66点。いいのか悪いのかはわからないが、大学の成績ではBかCぐらいか。「政権公約のサイクル形成に関する責任」は39点/50点。「政治主導体制の仕組みと運用」は27点/50点。重要な法案は通しているが、政権のドライビングコースが見えない。小泉政権時は、経済財政諮問会議などで議論されたことが政策の反映されるなど、政策の実現過程が見えていたが、いまは見えにくい。

「安倍内閣の政策実績に関する総合評価」は61点。実績、実行仮定、説明責任のうち実行過程は見えないので評価しなかった(ので、配分は実績70、説明責任30)。安倍政権の期間だけの評価ではなく、05年の政権公約の進捗も加味して46点。小泉政権の06年8月の評価は43点で3ポイントアップしている。まあまあの点数。
説明責任は15。自己評価がまったくなされていない。

「安倍内閣の政策実績に関する分野別評価」では、憲法・国民投票法が76点。目的の効果が出ていた。効果は改憲になるが、非常に難しい課題を着実に進めている。
外交・安全保障政策は62点。外交安全保障は割りと高い。最も低いのは地方分権改革で59点。三位一体は評価は高いが、効果がまだ分からない。権限委譲、道州制の展開を求めて生きたい。

参院選マニフェスト各党の評価は、自民62、公明50、民主62。各党とも2005年の公約と比較して、かなり後退している。
自民党は、小泉政権で行われてきた改革のレビューがない。郵政民営の一点突破で小さな政府を主張したが、何をすべきか、どのような手順で進めていくかが書かれていない。「美しい国」で155の約束、というキャッチフレーズはいいが、政党と美しい国とどのような関係があるのか。コンセプトがいろんなものの上に乗っけただけ。普通はコンセプトがあって上に乗せていくもの。
多くの政治家の関心をまとめれば総花的になる。ばら撒きになってしまう可能性がある。だからマニュフェストがある。個別政策は何をすべきかは明確になっているが、実施の時期についてはほとんど言及がない。野党ならまだしも、与党は自分たちでスケジュールできる。公約に書くべき。
公明党はビジョンが示されていない。全部読むと、なんとなくわかるが、前もって書いておいてほしい。所得再分配政策のオンパレード。自民党がこれまで目指してきた小さな政府とどのような関係があるのかをしっかり書いてほしい。ミクロ的な政策が多くて、システム全体への観点がない。自民党に欠落しがちなところに目が言ってるのかもしれない。
民主党は「美しい国」に対する国家像が示されていない。ないのならいいが。無駄遣いストップや生活重視は当たり前。新しいコンセプトを描いてほしい。実績評価なのか、これからの約束なのか判断できないものがある。また、総花的という意味では、自民党を勝るほど。国政レベルとは思われないことがたくさん書いてある。評価する側は大変苦痛。もう少し絞って示してほしい。大きな政府を目指しているように感じる。それはかまわないが、財政的な説明について書いてない。全部やったらやっていけるのか。財政の説明を検証可能にやってほしい。