ガ島通信

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ソニーのブロガー向け新製品説明会から見えたもの

ソニーVAIOのブロガー向け新製品説明会に参加してきました。知り合いのPR会社の方からのお誘い頂いた時に、何かと話題のソニーだけに「また凝りもせず…」と思わなかったといえばウソになります。それでもソニーの社員の方々がどんなことを考えているか直接話を聞くことができる機会はそうないと、参加することにしました。
最初にソニーマーケティングの方から『ブログマーケティングについていろいろなご指摘を受けている。会社として反省しているし、個人的には何でそんなことやっちゃうのという気持ちもある。あるべき姿を模索して行きたいの協力して頂きたい』と挨拶があり、CESでも話題となっていた、テレビサイドに置く「おひつPC」(VGX-TP1)、とデジタルチューナー(VGF-DT1)、ワイヤレスデジタルオーディオ(VGF-WA1)の3点の製品説明がスタートしました。

参加したブロガーが6人と少なかったこともあり、製品説明を受けながら、随時意見を交換しました。

「(おひつPCの)機能やデザインも良いが、誰が使うのか分からない」「価格と質感が中途半端。高くするか、安いのならとことん安くしないと売れないのでは?」「ものづくりへのこだわりが感じられない。アップルのiPodの裏側のステンレスは日本でわざわざ作っているとか、ホンダのtype-Rのポート研磨は職人がやっているとかファン心理をくすぐる物語がある。ソニーの今の製品にはものづくりのこだわりが感じられない」といったソニーの戦略に関わることから、「おひつPCにはCDトレーがあるのが気に入らない」「VAIOの文字が光ったらいい」といった製品の感想まで、色々な意見が出ました。

ソニー側からは「ユーザーがソニーに期待してくれていないのではないか」「製品の機能は複雑になっているのに、大型家電店では店頭で詳しい説明できず伝わらない」「ネットとテレビ、OSやインターフェイス、さまざまなものが移行期で商品の打ち出し方が難しい。それでもチャレンジしていかなければと思ってやっている…」といった悩みが打ち明けられたり、最初はやりたかったことがあったけれどコストの問題であきらめた部分があったこと(例えば、おひつPCは筐体に人工大理石を使いたいとデザイナーが言っていたが断念したとか)、それでも「ココだけは譲れないというところがあって実現しました」という開発の裏話なども聞くことができました。

午後7時から始まった説明会は、気付いたら10時を過ぎていました。ソニーVAIO事業本部の皆さんは、難しい質問にも答えていて、真剣にユーザー向かい合っていこうという姿勢を感じました。ただ、彼らはこだわりを持ったと個性的な人だったけれど、製品としてのアウトプットは微妙…。それは逆説的に、ソニーがものづくりへのこだわりを貫き通せない組織になっていることの証明しているようでした。ソニーは組織になると自信を失っていて、経営や商品戦略の「迷走」となって外に現れる…

もちろん、ユニークなアイデアや製品があっても、ブラッシュアップしていく中で、コストやビジネスモデル、会社や組織の論理によって、こだわりが削られていき、平凡になっていくことはよくあることです。変化の激しい時代、組織のあり方とマネジメントに苦労しているのはどの会社も同じでしょうが、まったく身勝手ですがソニーには「特別な存在」でいてもらいたいと思った次第です。ソニーの皆さんもっと自信を持ってものづくりに挑んでください。

この会合だけで、ソニー全体のブログに対する接し方や考え方が変わったと判断するのは早計でしょう。ただ、ブロガーとのリレーション、コミュニケーションを深めて行きたいという意思があること、ソニーの中に「熱い人がいる」ことは確かでした。

最後に、ワイヤレスデジタルオーディオのモニターの申し出がありましたが、お断りしました。音楽の好きな私にとって魅力的ではありましたが、対価としてはふさわしくないと思いましたし、ソニーの皆さんとの熱い議論が冷めてしまう感じがしたのです。ブログをやっていたからソニーの中の人と色々話が出来たわけですし、それだけでプライスレスなのです。

モニターに参加されているブロガーが悪いとかそういうのではなく、色々なスタンスがあるということです。今回は見送りましたが、自分自身も納得できればモニターにも参加するでしょうし、製品などを頂くこともあるかもしれません。単なるPRの手段としてだけでなく、さまざまな企業とブロガー(に限らず、ユーザー)とのリレーションが生まれると良いでしょうし、私自身も考えて行きたいと思います。