ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

年末年始に読む本「フラット化する世界」と「希望格差社会」

フラット化する世界(上)

連載を書かせてもらっている日経ITPLUSが年末に行っている恒例の専門家アンケートに私も参加しました。「年末年始のオススメ本」に「フラット化する世界 」(トーマス・フリードマン著、日本経済新聞社)を挙げました。

話題になった本ですし、20人以上の専門家が回答すると聞いていたので同じ書籍を推薦する人がいるかと思いましたが、一人だけででした(あまりにベタすぎて敬遠したのかも…)。

推薦理由は下記の通り(日経ITPLUSから抜粋)

ピュリツアー賞を2度受賞したジャーナリストのトーマス・フリードマンが、いま起きている世界の変化や問題点を、自身が体験しながら生き生きと描き出しています。ワクワクしながら一気に読みました。経営本でもあり、ジャーナリズム本でもあり、読む人にとって多くの示唆を与えてくれるでしょう。雨後の竹の子のように出版されている、ウェブ2.0の解説本を買うより本質的だと思います。

年末年始ということで、普段は忙しい方もハードカバー(それも上下巻)を読む機会があるかもしれないと思い新書を外して選びました。
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
それと今年の本ではなく2004年の出版なのですが、「フラット化する世界」との併読書として「希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く」(山田昌弘、筑摩書房)を挙げました。
マスメディアを中心に「格差社会」「負け組み」と言う言葉が溢れ、格差を賃金や雇用形態、さらには小泉政権の改革に結びつけた議論が目立ちましたが、本質的ではなかった気がします。この本を読めば、格差→正社員を増やせという単純な議論では済まされない、日本における社会構造の変化とその問題が示されています。
新平等社会―「希望格差」を超えて
今年、その続編的な本として「新平等社会―「希望格差」を超えて」(文藝春秋)が出版されています。重なっている部分もあるので二冊購入する必要はないと思いますが、こちらには「結婚格差-結婚難に至る男の事情、女の本音」という非常に興味深い章があります。

  1. 女性は結婚後、男性(夫)に家計を支える責任を求めると言う傾向が強い
  2. 若い男性の収入はオイルショック以来相対的に低下、そして近年は不安定化している
  3. 結婚生活に期待する生活水準は戦後一貫して上昇している

未婚化が生じる根本的理由は3点にあるとした上で『収入の少ない男性は結婚できない、それが少子化につながっている』(こちらが紹介されることが多い)『実は、専業主婦志向の女性が多いが、それはフェミニストにも反フェミニストにも都合が悪いので無視されている』『「女性が選ぶ時代になった」というのは全くのウソで、多くの女性は一定以上の収入を稼ぐ少数の男性から「選ばれる」立場になっている』とし、結果的に男性の夢見るフリーターは『いつか夢が叶えば結婚すると語るが「いつか」が来る確立は低い』く、女性は『何人もの男性とつきあいや別れを繰り返す中で、経済的に生活できそうな収入を稼ぐ男性に当たったら結婚を考える』ことになり、いつまでも結婚の格差が埋まらないと説明しています。これらの調査結果が発表できなかったといった裏話も書かれています。

他の専門家の方はどんな本を選んでいるのか少しご紹介

はてな副社長川崎裕一さん「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」「ウェブ人間論

2ちゃんねる管理人西村博之さん「東大オタク学講座

早稲田大学大学院GITS客員助教授境真良さん「貨幣論

富士通経営執行役加藤幹之さん「みんなの意見は案外正しい

総務省総合通信基盤局・谷脇康彦さん「スティーブ・ジョブズ-偶像復活

この専門家アンケートはオススメ本以外に下記の項目もあります。