ガ島通信

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「天下りあっ旋問題」ブログは世論を作り出すことが出来るのか

「Life is beautiful」の中嶋聡さんが「天下りあっ旋全廃に反対したらもう自民党には票を投じない」というバトンを提唱しています。

12月7日に開かれた経済財政諮問会議で、日本経団連の御手洗会長ら民間儀意が中央省庁の公務員の天下りのあっ旋を禁止するように提言したことに対して閣僚から反発が出たと言うニュースについて。インセンティブの与え方が間違っていて、官僚のあり方を変えて説明し国民を納得させることが可能だとして、「天下り全廃」に反対した閣僚に苦言を呈している。「自民党には票を投じない」との主張をブログで集めることで、公務員制度改革を後押ししようと言う試みです。
同会議のHPで公開されている大田大臣の記者会見でも「一番議論が分かれた」として紹介されています(議事録は10日時点では公開されていませんが、そのうち公開されるようです)。会見の一部を抜粋すると…

権限と予算の押し付け的あっ旋はいけないという点は一致。民間議員は、公務員全体、パッケージとして見直すことで、再就職あっ旋もなくしていく。ガラス張りの人材バンクにしていく。一方、公務員も年金開始までは何らかの仕事を探すことは必要。職探しがなかなかできないということになると、中立性、公正性が保てなくなるとか、職探しに気をとられて、日本の根幹を揺るがしてしまうような、公務員制度が揺らいでしまうような懸念が示された。…再就職あっ旋がオープンの場で議論されたのは有意義だった

なるほど、職探しに気をとられると日本の根幹が揺らぐのですね…

朝日新聞の記事によると

省庁側はこの提案を察知した数日前から、事務局を担う内閣府に反発の姿勢を見せていた。「提案の撤回要求や諮問会議への非協力表明など露骨な要求があった」(内閣府幹部)。政府内には「あっせん禁止で公務員個人による就職先探しが増えると、目に見えない癒着が生じかねない」と主張する声もある。

とのことです。

ちなみに、民間議員ペーパー(PDF)は伊藤隆敏丹羽宇一郎御手洗冨士夫八代尚宏の四氏の共同署名で、中馬プランをベースに修正点を示し、『年功序列システムを壊し、能力・実績主義を重視して、年齢に関わらず優秀な人材を登用・処遇する人事・給与制度へと移行すべきである』と提案しています。希望者は定年まで働ける制度や民間の再就職支援サービスと連携した求人マッチングの強化などのフォロー策も書き込まれているのですが… なかなか変化と言うものは受け入れがたいし、それ以上に天下りは美味しいと言うことなのでしょうか。

ただ、東京大学教授の宮田秀明さんは日経ビジネスオンラインのコラム「経営の設計学」で

優秀な学生ほど、日本型企業の悪い面に気がついている。多かれ少なかれムラ社会の窮屈な面があることに気がついている。経団連もムラだし、産業界もムラだ。極端な場合、村八分という言葉が象徴するように自分の力を存分に発揮することが難しいのではないかと思ってしまう。そうした学生は、外資系を中心とした自由競争の世界や、ベンチャー企業を選ぶことになる。
…中略…
人材流動性が高くなっているという声をよく聞くが、日本の企業社会ではまだまだムラ社会的な規範を大切にし過ぎている

と主張しています。公務員の側だけ変革を起こしても難しいかも知れません。出来ることなら、このバトンが公務員制度改革だけでなく、日本社会における多様な働き方の議論のきっかけになればより良いと思いつつ、バトンに賛同したいと思います。

中嶋さんはCNETブログの「Web2.0時代にふさわしい政治への参加の仕方」で

今回の試みは、実験でもあるが同時に「ブログの活用のしかた」の提案でもある。「せっかくブログという新しいツールを得たのだから、それを使って自分の意見を述べ、もっと積極的に政治に参加しましょう、関心を持ちましょう」という提案である。まさに、「Web2.0時代にふさわしい政治への参加の仕方」の提案である。

と書かれています。

ちょうど「ブログと言う個人が発信できるというツールを得たのに、なぜか社会参加を行うという意識が希薄なのではないか。もう少しブロガーも社会に関わる意識、シップを持つようにならないものか」という議論をしたばかりでした。ブログ(というより情報を発信できるあらゆるツール)が、シチズンシップを発揮するために使われるというこのような試みが積み重ねられていくことで、少しずつ社会が変化していく。そんな世の中になるよう願っています。