ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

これは酷い 毎日新聞の竹島公取委員長インタビュー

これはあまりに酷すぎるインタビューだと思いました。ジャーナリズム考現学さんのエントリー「読者不在の特殊指定見直しキャンペーン」経由で知ったのですが、新聞の特殊指定問題で毎日新聞が4月25日に公正取引委員会竹島一彦委員長のインタビューを紙面の6割以上を割いて大きく掲載しています。MSN毎日インタラクティブでも記事が掲載されていますので、関心のある方はぜひご覧ください。インタビューの一部を抜粋します。

記者・昨秋の総選挙で自民党が大勝したので「チャンス到来」と思ったんじゃないですか。

竹島・そういうことも全然関係がない。あくまで独禁法の問題。

記者・法律的にすっきりすれば竹島さんは愉快かもしれないが、言論に与える副作用が大きいという議論ですよ。

竹島・ほかの業種はみんな苦労して物を売ってるんです。消費者の支持があれば売れる。宅配は折り込みチラシによる収入など十分にペイする事業なんです。(新聞特殊指定を残す場合)宅配便なんかをどうやって説明するんですか。

ここまでは特殊指定のことを聞いているからまだいいとして(それにしても酷い質問の仕方だが)、『ほかの業種は苦労して物を売っている』という部分を攻められないと見るや、個人情報保護に問題をすりかえて、言いがかりのような質問を浴びせます。

記者・竹島さんは官僚として個人情報保護法の制定に深くかかわられた。いま個人情報の拡大解釈・過剰反応が広がり、表現の自由は萎縮(いしゅく)して匿名社会化が進んでいますね。

竹島・それは本件とは別問題。

記者・竹島さんが予見できなかったことが起きているわけですよ。

竹島・そんなのは個人攻撃に等しい話です。個人情報保護の過剰(反応)が起きているのは法律のせいじゃない、扱う人間の常識の問題なんですよ。

記者・常識が大事だと私も思いますが、あなたの立場で「後は常識だ」と傲然(ごうぜん)と言われるのは引っかかる。誰が常識を形成するのかというおもんぱかりが大事じゃないですか。

竹島・ああ、そりゃそうです。だから周知徹底をして、そういう事例(過剰反応)が出てきたら「法律はそんなことは求めてないですよ」と説明すべきでしょうね。

記者・どうも「新聞は偉そうでけしからんじゃないか」という憤りが竹島さんの情熱の源になっているようですね。

竹島・私だって40年以上の定期購読者ですよ。活字文化、新聞は当然必要だと思っている。新聞は社会の公器です。紙面を作る自由はあるが、率直に言ってもっと公平かつ慎重であってほしいと思いますね。

このように捻じ曲がったインタビューをして、新聞は客観報道、多様な言論を支えているとでも言えるのでしょうか。ましてジャーナリズムなど言えるのか。

このインタビューの聞き手は山田孝男氏。ネットで検索したところ山田氏は元政治部長で東京編集局次長の要職にあるようです。ちなみに、山田氏は「発信箱:どのツラ下げて…」というコラムで、マスメディアを批判しています。

検察の尻馬に乗った鈴木宗男バッシングを競いながら、今や彼を評論家としてもてはやすメディア。前日までホリエモンをもてはやしながら、検察次第で怒とうの堀江たたきに走るメディア。むかし軍部追従、いま検察追従で、変わらぬものといえば俗論迎合の卑しさしかないおまえが、どのツラ下げて明日を語り、針路を説くのか。そう感じている読者が少なくないと思う。

この記事は、はてなブックマークでも評価が高いのですが、今回はどうしたことでしょうか。逆に、どのツラ下げて語るのかと聞きたくなります。

毎日新聞は新聞協会賞を何度も取得して新聞ジャーナリズムを実践する比較的良識的な会社として私は評価してきました(もちろん会社なのでいろいろな問題はある)。朝日や読売、産経に比べて(給料は安いものの)自由で多様な言論が紙面上でも交わされ、現場の記者と付き合っていても実感としてありましたが、特殊指定問題に関しては異論や反論はまったくないようです。まさに大政翼賛会報道(労働組合もまったく問題意識がないようだ)。そして、このような問題に対して新聞記者からほとんど反応がないことも残念でなりません。

#参考・これまでの特殊指定関係のエントリー「特殊指定見直し」に見る新聞業界の驕りと甘え「特殊指定見直し」という大政翼賛会新聞労連も特殊指定見直しに反対