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ICPFセミナー「NTTをどうする」に参加した

池田信夫氏のブログ経由で知った情報通信政策フォーラム(ICPF)の「NTTをどうする」に参加してきました。モデレーターは池田信夫ICPF事務局長、スピーカーが島聡(ソフトバンク社長室長)、林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長、元NTT)でした。

まず、島氏とソフトバンクのCTO、林氏からNTT問題についてのプレゼンがあり、池田氏が入って質疑が行われました。ホットなテーマだけに、かなり期待して会場に行ったのですが、途中までは眠りそうでした。しかし、質疑に入ったとたん会場からソフトバンクに対する批判(ヤジ?)が出て、結構面白いものになりました。
開催趣旨と下記の通りです(ICPFのブログより抜粋)

NTTは昨年、事実上の「再々編」計画ともいえる中期経営戦略を出しました。これに対して、競合他社からは「独占時代への逆行だ」との批判が強く、ソフトバンクはインフラを「水平分離」して通信各社が共同出資する「ユニバーサル回線会社」構想を提案しています。

今回のセミナーでは、このソフトバンク案を提案した島聡さん(元民主党「次の内閣」総務相)と、NTTのOBである林紘一郎さんの討論によって、次世代ネットワーク時代のNTTのあり方を考えます。

島氏のプレゼンは総務省の通信・放送の在り方に関する懇談会で孫氏のプレゼンと同じで新鮮味はありませんでした(最もソフトバンク案を提案したのが島氏だそうなので、同じなのは仕方ないのかな?)。

「ADSLのシェアはソフトバンクとNTTが拮抗しているが、光の回線シェアは高すぎる」「平等なアクセスは国民の基本権利、ユニバーサル会社だとNTTが3000万しか敷くことができない光が6000万になる。月額は690円。ADSLのときに多くの人が最初はできないと言ってたけど、ソフトバンクがやるとできちゃった」と現状批判に加えて、「99年の(NTT)再編はあまりに密室で行われた」などとチクリと皮肉も入れていました。元政治家らしく力強く、NHKでよくやっている委員会の質疑のようなプレゼンでした。

さらにCTO(名前忘れた…)が出てきて、接続の話を長々とやっていました=写真。技術的な部分だったこともあり、話自体も何が言いたいのかよくわからなかったので、このあたりでかなり眠くなっていました。

林氏の話の主な内容は「NTTにとっては次は光だと思っていたところにADSLが競争になって反省の機会を与えてくれた。いまソフトバンクは逆のことをやっているのではないか」「光だけでなく無線もある。ひとつの技術に固執するのはよくない」「NTTのコンテンツ分野への参入規制を早めにやったほうがいい」「NTT議論は20年もやっているので、そろそろやめたい」などでした。

私の予想では質疑応答はNTTに批判的なものから始まると思っていたのですが、そうではありませんでした。まず「NTTは解放の義務があるがソフトバンクはどうなのか?」という質問があり、CTOが「NTTはV6だが、ソフトバンクはV4なのでできない」(このあたり技術的なことは分からないので間違えている可能性もあります)と答えたところで、会場から「できるはずだ。ウソをついてはいけない」と批判が出ました。さらに言葉の応酬で双方のボルテージが上がってしまい、会場の雰囲気も凍る寸前でした…。

他の方は「確かに光はNTTの一人がちだが、CATV会社もトリプルプレイをやっている。孫氏のアクセス回線は国民のものという発言には違和感がある」「無線は有限で優先は競争で引くことができる。通信会社が設備投資を自分でせずにリターンをもらうというのは正当なのか?」と質問していました。

これは池田氏が「ユニバーサル回線会社」で書いている

現実には今の電話線でいいユーザーもいるだろうし、FTTHよりもWiMAXのほうが安くなるかもしれない。全回線を強制的に光ファイバーにするというのは、市場経済ではありえない。

ソフトバンクとしては、ボーダフォン買収で資金を使い果たしたので、FTTHは他人のフンドシで、ということかもしれないが、リスクを取らないでリターンだけ取ることはできないというのは、孫氏が示したことではないか。国のインフラにぶら下がって各社が争っても、真の競争にはならない。せっかくソフトバンクがヤフーBBで破壊したNTTの独占状態を、また元に戻そうというのは、いかがなものか。

という部分と共通する疑問なのでしょう。

電力会社の光ファイバー網についても質問がありましたが、島氏は「それはユニバーサル会社には吸収しない」と言ってました(これもよくわからない 要はNTT潰しってこと?)。

最後は「あの資料は放送と通信の融合というテーマで出したものなので、皆さんの意見をこれから検討します」と逃げ?、結局、島氏とCTOが「なぜソフトバンクが光を引かないのか」「ユニバーサル会社は無線のほうが向いているのではないか」との質問に、まともに答えることはありませんでした(そういう意味でも国会の委員会っぽかったなー。それに、セミナーは国会じゃないのだし、もう少し目線の高さを考えて話したほうが良い気がする。まだ「先生」気分が抜けないのかしら?)。

既存マスコミは、とりあえずNTT批判というスタンスが多いので、ソフトバンクに批判的な人がいること(たまたまその部分に質疑が集中しただけかもしれませんが…)は私にとっては新鮮でした。

参考・通信と放送のあり方に関する懇談会(資料、議事要旨)
この人に聞きたい島聡さん(朝日新聞)


NTT民営化の功罪―巨人の「独占回帰」を問う (B&Tブックス)

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