ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

梅田望夫さんの「ウェブ進化論」出版記念イベント

2月7日に開かれる「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)」の出版記念イベントで行われるディスカッションに観客として出席することになり、予習のため本を読んだところです。大変読みやすく、インターネットが起こそうとしている(本当の)変化や可能性が分かりやすい言葉で語られており、「インターネットってどうなん?」という方から、ウェブ2.0という言葉に踊らされそうになっている方まで、幅広くお勧めできる内容です。詳しい感想は、イベントのディスカッションなどを踏まえて書きたいと思います。

で、ディスカッションなのですが、梅田さんのブログ上でアジェンダが告知されています。第一部は「これからのメディアについて」、第二部は「これからのSNSとブログについて」です。どちらもどんな議論になるのかが楽しみですが、やはり個人的には第一部に関心があります。

第一部 これからのメディアについて

総合司会:橋本大也、パネリスト:R30、徳力基彦、梅田望夫

Key Questions:日本においてメディア(テレビ、新聞、出版)の淘汰はどのように行われるのか? 既存メディアとネットメディアは融合していくのか、並立し続けるのか? 融合・淘汰が起こるとすれば、それはどういう時間軸で、どんなブレークスルーによって起こるのか?

R30さんが語りまくってくれるはずなので、ディスカッション後は考え方が変わる可能性大なのですが、現時点の私の考えをメモ。

メディアの淘汰については、新聞・出版の活字メディアは規模が縮小する。新聞について予想すれば、インターネットの出現と言うよりは、生活パターンや意識(「新聞ぐらい読んでなきゃ」という意識など)の変化、広告収入の減少などビジネスモデルの変化についていけずにジリ貧になっていくでしょう。

テレビはインターネット企業との再編もあるでしょう。通信と放送の融合が騒がれていますが、Gyaoはテレビそのものなので現実的には融合していると考えます。あとはお上(役人が)の承認がどうなるかです。

結局、プラットフォーム(装置産業)部分でインターネット、テレビは思いっきり激突するはずなので、コンテンツを作れるかどうかが勝負となってきます。規制に守られ独自番組をほとんど作っていないテレビの地方局はかなり悲惨なことになるのではないでしょうか。テキストは情報量としてはリッチではありませんが、記者を抱えている地方紙のほうが強い気がします(問題はビジネスモデル)。

では、ネット言論との関係はどうなるか?「AFP BB Newsが21世紀の報道?ちょっと違うような気が…」でも書きましたが、現状では評論やコラムであってもすぐに通信社が配信できるレベルのブロガーは少ない(ストレートであればもっと厳しい)。確かに量は増えましたが、質の上がり方が比例していないように思えます。

この状況を乗り越えるには、内部からの改革と教育が必要でしょう。例えば、グーテンベルクの印刷機は宗教改革を誘発し、教会が独占していた知恵を開放したわけですが、単に印刷機を作っただけでなく、ラテン語という限られた言葉からドイツ語などへの聖書の翻訳があったり、印刷されることによる教育があったりしたから、時代の変革が確実なものとなったのではないでしょうか(間違っていたらごめんなさい)。装置だけでは、やはり変革は難しく、複合的な要因が必要になります。

知が開放されれば、一気に既存の枠組みを突き崩す可能性がありますが、ネット言論の質は上がらないが新聞社などのソースは疲弊するという「コンテンツ複合不況」もありえます。そうなれば、EPIC2014の「最悪の時代」も笑えません。

なんだか梅田さんのオプティミズムと対極にある悲観論ですが、とりあえず現時点でのメモということで。