ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

news23虚報疑惑=筑紫哲也はダンラザーになってしまうのか?

11月23日のnews23で放送された「ネット時代のジャーナリズム論」の中で使われた、放送と新聞の信頼度に関する数字がおかしいのではないかという議論がブログ上で起きています(放送は生で見ることが出来なかったのですが、関心があったので友人に送ってもらいました)。ブログ「Irregular Expression」のgori氏が議論の中心で、 エントリー「NEWS23がやったのは捏造ではなく詐欺でした」ではコメント欄に投稿された読者からの情報に基づいてアメリカからソースを発掘し、調査を続けています。
「問題がある」と指摘されているのは画像のグラフ。アメリカのメディアの現状を紹介する際に利用した「ギャラップ社の世論調査、サマリー」(2005年5月)のデータをnews23側が、既存のマスメディア側に都合が良いように「加工(捏造)」しているのではないかということ。本来は、「どれくらい信頼しているのか」という質問だったものが、news23の手にかかると「信頼している」「信頼していない」の対立軸となってしまっているという(確かにデータを見るとそうだし、ネットやブログとの比較はない)。

このグラフを見せながら番組では

新聞の世界でも紙からネットへのシフトが起きている。発行部数が減り続け代わりにインターネットサイトへのアクセス数が伸びているのだ。メディアがこうして変化する中でもテレビニュースや新聞に対して信頼していると答える人の方が多い

とナレーションをかぶせています。ブロガーによる指摘が事実であれば、恣意的すぎるデータの使い方であり、大きな問題でしょう。

ネット上ではnews23筑紫キャスターの責任を問う声が大きいようですが、このリポートはニューヨーク支局の松原耕二記者(著書「勝者もなく、敗者もなく」、ほぼ日刊イトイ新聞にも連載あり)によるもので、その日に放送される内容のデータ一つ一つまですべてキャスターである筑紫氏が「裏取り」することは現実的に不可能です。もし虚報だとすれば、松原記者に第一の責任があると言えるでしょう、そして次はデスクになります(テレビの編集チェックシステムがどうなっていうるのか知りませんので、新聞社で言うデスクにあたる人)。

むろん、筑紫氏が責任がないわけではありません。筑紫氏がダンラザーにならないために求められていることは、放送のすばやい検証です。視聴者からデータに疑問があると指摘があるのであれば、しっかり検証するのが「ジャーナリスト」の務めです。TBSはオウム事件で教団幹部に当時オウム対策に取り組んでいた坂本弁護士のインタビューを見せ、坂本弁護士の一家殺害事件の引き金を引いてしまった過去もあります。そのとき「TBSは死んだ」と言ったのは筑紫氏だったと記憶しています。

日本のテレビ、ジャーナリズムが問われています。やはりTBSは死んでいたのかと…

ダンラザー事件というのは、湯川さんのブログのエントリー「ラダーゲート」で詳しく紹介されていますが、アメリカCBS放送のニュース番組「60ミニッツ」が指摘したブッシュ大統領の兵役逃れ疑惑報道の根拠となった文書が捏造であったことがブロガーによって暴かれ、責任を取る形で番組のアンカーマンだったラザー氏、記者、CBSの幹部が辞任することになったものです。