ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「総選挙はてな」は公職選挙法違反か?

今回の総選挙ではネット、ブログでの議論がどのくらい選挙結果に影響するのかも注目されています(個人的には、まだ目に見えては影響しないのではないかと思っているのですが…)。そんな中「総選挙はてな」が話題になっています。概要をはてなのメルマガで見て、「面白そうだ」と思って、アクセスしたときにはすでに「総選挙はてな公職選挙法違反に当たるのではないか?」という議論が始まっていました。はてなアイデアの予測市場の仕組みを利用。ユーザーは、アイデアポイントを使って株を取引して各政党の時価総額(つまり獲得議席数)が計算されるというものです(詳しいシステムはヘルプをご覧ください)。

公職選挙法、第138条の3(人気投票の公表の禁止)によると
『何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない』となっています。はてなは、株取引や時価総額という言葉を使っていますが、政党の名前は、自由民主党民主党となっており、違法の可能性が高い気がします(専門家ではありませんので、はっきりしたことは分かりませんが)。
総務省には「IT時代の選挙運動に関する研究会」というのがあったようで、そこでもネット上での投票について触れている部分がありますが、それを読んでも、分が悪い。CNET Japanのニュースによると、はてなは弁護士と対応を相談中だそうです。はてなの対応が注目されます。

この話題をマスコミが取り上げるかどうかも重要です。ネットで盛り上がって、マスコミが気付く。そして、新聞社や通信社が「はてなのサービスに違法の可能性」と報道すれば、関係機関は動かざるを得ない。この、関係機関が「動かざるを得ない」と感じるかどうかが、メディアとしての影響力ということになります。

いま、ネットは少しずつ力を持ち始めていると思います。はてなの試みはとてもユニークでおもしろいのですが、これまでのような「ネットだから許される」という状況ではなくなってきています(何度も言っていますが、ネットとリアルは分断しているのではなく、ネットはリアルの一部であり、ツールでしかない)。「おもしろいことをじゃんじゃんやって、流れを変えてしまえばいい」という議論もあるようですが、まだネットはそこまでの力はないと思います。それよりも、へたに地雷を踏んで、ネットの自由や可能性を狭めるほうが怖い。法律は、新しい技術や手法には未対応で、だいたいの場合時代遅れです(言い換えれば、法律は時代についてくることもある)。ネットが使えれば選挙にもいろんな可能性が見えてくるでしょう。ただ、いきなりは変わらないので、少しずつやっていくしかないでしょう。

ちなみに、総務省の研究会では『前田委員 ただ、新聞社なんかのやつは非常に慎重に標本をランダムサンプリングして、公平性といいますか、日本じゅうのバランスのとれたデータを得ようとするんですが、特定の政党の人が自分の政党が人気があるようにワーッと人気投票に参加させてしまうという事態は非常に予測されますよね。それに対して、新聞社等の行う世論調査は、少なくともちゃんとしたところのものはそうならないような手立てはつくってあるんだと思うんですね。』(第9回議事録から一部抜粋)というのがあります。確かに手法は、バランスの取れたデータを得るようにしているかもしれませんが、質問の立て方や順番などで、いくらでもバイアスをかけることができます。現状の新聞社の世論調査もかなり危ういかもしれません。