ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「郵政解散」各紙はどう伝えたか

毎日、朝日、読売、産経(日経は近くのコンビニで売り切れていた。入手次第追加予定です)の各紙が、今回の「郵政解散」(自爆解散?)をどう書いたか。最近、各社が力を入れている1面での論説を読み比べました。新聞社名、執筆者、見出しです。『』は私がピックアップした内容です。詳しい内容は各紙でご覧ください。

  • 毎日(倉重篤郎政治部長) 「この『起』を逃すな」

郵政民営化という小さな土俵上では、首相は圧倒的な優位に立つ。… しかし、今回の選挙は首相の思惑を超え、国民の関心が必ずしも高くない郵政問題にとどまらず、日本の政治が立ち向かわなければならないその他の重要問題(少子化、消費税、外交など)についても、国民の信を当貴重な機会になるだろう』

小泉政治は「起」の政治と言われる。時代を先取りした鋭い問題提起をするものの、「起承転結」とまで行かずに尻つぼみになるものも少なくなかった。道路公団改革がその典型だった。しかし、首相は、郵政民営化では「殺されてもいい」と妥協せず踏ん張った。首相の身を賭したこの「起」を大切にしたい…』
小泉の妥協のない姿勢にはエール。郵政民営化が有利という見通しもはっきりと書き込んでいます。最後のほうに『民主党が、首相を超えるパワーと政権構想力を提示すべきだ』。二大政党制を望んでいるにしては、書き込みが少ない。おまけでしょうね。政策論争を呼びかけるなら、はっきり呼びかけたほうがいいかも。中立、どっちつかずの印象も。うまく逃げた?

  • 朝日(持田周三政治部長) 「小泉自民の統治力問う」

『首相と反対派の立ち回りを通して、もうひとつはっきりしたのは、この党の政権を運営していく能力の劣化である。…これほどもろい自民党は見たことがない』『首相は造反グループや民主党を「改革抵抗勢力」と切りつけ、唯一の争点だと演出したいのだろう。だが、その前に問われるのは、自民党そのものの統治力である。…救世主と浮き立った小泉バブルがはじけた後に、何があるのか。自民党はこの秋の結党50年を、思いもよらぬ展開で迎えることになった』

なんのこっちゃ? 小泉は「自民党をぶっ壊す」と言ってました。民主主義だから、自民党という同じグループに反対派がいてもいいし、反対がいるなら選挙をするのも民主主義。非合法クーデターとかじゃないわけだし、反対の人がいると統治力がないのか?(いつも言ってますが、皆が同じ意見というのは最も怖い)。それに、政権を運営していく能力が劣化しているという根拠が不明。『青木氏の神通力も効かなかった』との言葉もあり、実は古い自民党と癒着してプロレスを展開してきた朝日政治部の二面性を思わず晒してしまった模様。小泉バブルは、はじけていないようだし、自民の批判ばっかりだけど民主党では政権運営できるんかい!?(まあこんな問いかけはこの新聞社には無意味だが)。どうやって今後、「日本の左派リベラル」を演じていくのか。まあ、いきなり急進右派なんてのに早変わりするかもしれませんが…。

  • 読売(小田尚政治部長) 「歴史の心配に堪えられるか」

『小泉首相は懲罰的な衆院解散に踏み切った。前代未聞の展開である。これが歴史の審判に堪えられる政治行動なのか。真っ先に責任が問われるのは、小泉首相である』『そもそも、この解散に展望はあるのか。法案を否決した参院の構成は変わらない。解散の目的が「党解」自体にあるようにさえ見える。解散によって政局混乱と政治空白を生んだ首相の政治責任は極めて重い』

小泉批判を前面に押し出した内容です。激しい言葉で小泉をののしったかと思いきや、造反組みも民主もぶったぎり。その結末は『政策の推進には、安定した基盤を持つ政権が不可欠だ。今回の衆院選を、政界再編も視野に入れた日本政治の新たな出発点にしなければならない』って、小泉はバツ、造反もバツ、民主もバツ、誰が新しい日本政治を担うんでしょう? やっぱり石原慎太郎か! そういえばナベツネ氏って小泉嫌いでは? 結局のところ、冒頭から『「政治家は歴史の法廷の被告である」とは、中曽根元首相の言葉だ』とナベツネ主筆の盟友の言葉い使っているし、政治部長のナベツネ様への内向きアピールかも知れない。

  • 産経(関田伸雄政治部長) 『「わかりにくさ」払拭する好機』

『民営化反対派から「江戸の敵を長崎で討つようなもの」(亀井静香元自民党政調会長)と非難されたが、改革断行に向けて、政治を大きく変えるチャンスでもある。…小泉政権によって政治が国民に身近なものになったことは否定できない』『確かに、郵政民営化が必要な理由や民営化後に郵便局はどうなるか、首相が十分に説明責任を果たしたとはいえない。だが、「民営化には賛成だが、政府案には反対だ」とする民主党日本郵政公社労組(旧全逓)や全郵政といった支持労組へのはいりょもあって提案を出せないままに終わった』『今回の解散はこうした政治のわかりにくさを払拭する絶好の好機だ。…不可欠なのは全党が本気で勝負することだ。建前だけの「改革」に国民はもうだまされない。所属候補全員が政権公約(マニュフェスト)を示して総選挙に望んでほしい。小泉政治によってわかりやすくなった政治を後戻りさせてはならない』

言いたいことが明確で、分かりやすかった。ちなみに注目の産経抄は小泉=織田信長論。『島村農水相を罷免して兼任するという、史上例のないやりかたは、信長の延暦寺焼き討ちを思い出させもする。総選挙とは「桶狭間の戦い」か「本能寺の変」か』。


どうも、政治だけでなくマスメディアにも「分かりやすさ」が求められている気がします。産経、プロレス朝日(もうネタにしかならんが)は、ある意味分かりやすい。読売は言葉だけではやや分かりにくい。ああでもない、こうでもないと客観報道を装う毎日が読んでいて一番何が言いたいのか良くわからなかったし、つまらなかった。毎日は、いつものように記者の個性を出していれば良かったのに… 今後の各紙の報道内容、姿勢の変化にも注目していきたいと思います。