ガ島通信

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やはり総務省狙ってましたか(エライ勘違いあり)

総務省の情報フロンティア研究会の報告と「実名でのネット活用促す」の共同通信の原稿については、日経BPの記事「総務省『ネット実名』騒動の不思議」に詳しく書きました。



IT mediaが総務省に取材「ネットに匿名性は不可欠ー総務省」という記事を出しています(微熱日記さん経由で知りました。ありがとうございます)。ご参考に。

総務省の「情報フロンティア研究会」報告書について話題になっています。なにやら、『インターネット上に流れる情報の違法性、有害性を判断し、相談を受け付けるため、専門家による第三者機関「有害情報判定委員会」(仮称)を創設する方向』だそう(エライ勘違いでした。下記ご覧ください)。既にいろいろなブロガーが書いているにもかからず、現在PDFファイルと格闘中でございます。今しばらくお待ちください。


PDFファイル読みましたが、大きな勘違いがひとつ。第三者機関の記事は、フロンティア研究会と関係なかったです。すいません。フロンティア研究に関する記事「実名でのネット活用促す 総務省『悪の温床』化防止」については、日経BPの連載でも書いたのですが(「総務省『ネット実名』騒動の不思議」です)、サイバースペースのモラル教育にブログやSNSを使って実践的な教育を行ったほうがいいのでは?ぐらいの内容。どう報告書を読んだら、悪の温床を防止するために実名促進となるのかは、分からずじまいでした。

ちなみに議事録には『個人のITリテラシーは重要だが、経営者や自治体の長のITリテラシーが非常に大事』との文章もあり。残念ながら、こちらのほうの「教育」は提言には盛り込まれていない模様(すげー分量が多いので見逃している可能性大。盛り込まれてたら指摘してください)。

追記(6月30日) 地元紙の夕刊に情報フロンティア研究会の記事が掲載されていました(もう報告が出ているのに、「最終報告に盛り込む」ってそのままになっていたのは寒い…)。どうやら記事は長かったらしく、もう少しあったので紹介しておきます。


総務省は27日、自殺サイトなど「有害情報の温床」ともいわれるインターネットを健全に利用するために、ネットが持つ匿名性を排除し、実名でのネット利用を促す取り組みに着手する方針を固めた。匿名性が低いとされるブログ(日記風サイト)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)を小中学校の教育で活用するよう求め、文部科学省などと具体策を詰める。今週初めに発表する総務省の「情報フロンティア研究会」の最終報告書に盛り込む。

 国内のネット人口は増加する一方だが、匿名性が高いために自殺サイトの増殖や爆弾の作製方法がネットに公開されるなど、犯罪につながる有害情報があふれている。総務省はそうしたマイナス面を排除し、ネットを経済社会の発展につなげていくためには、実名でのネット使用を推進し、信頼性を高めることが不可欠と判断した。(ヤフーニュースより)と…前の段落は同じ。そこから…
  
研究会の提言は「匿名性が高いためネット社会への心理的な忌避感が広がっている」ことが、情報技術(IT)利用の障壁になっていると指摘。子供のころからネット社会のモラルについての「しつけ」が重要と位置づけ、小中学校の児童・生徒がブログや、知人だけが入れる「知り合いネット」SNSを使い、実名または実名に準ずるネット上の名前で情報発信する仕組みを全国で導入すべきだと提案した。

また地域活性化のために、地方自治体や自治会単位でもSNSを導入する必要性を訴えた。ただネット上での実名使用はプライバシー保護の観点から課題もあり、今後議論を呼ぶ可能性もある。

総務省によると、ネットの実名主義は韓国で進んでおり、犯罪防止にも役立っているという。



やっぱり、かなりの歪曲が入っていると思われます。報告書は『サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と安全に交流…』と書いてあって、どう読めば、実名に準ずるネット上の名前になるのでしょうか。不思議。

それに、ITではなく、ICT(Information and Communication Technology)だと思うんですがね…



追記(7月1日) 踊る新聞屋さんから「藤代裕之@ガ島通信にミスリードされてたら笑うけどな」との突っ込み入ってましたが、それはそれで仕方ない(笑)。あの報告書をどう解釈するかは、本当にそれぞれでしょうから、私と違った読み方をされる人もいると思います。ちなみに、実名やネットダークサイドの部分について報告書が述べているのは、提言の部分で、45ページと46ページを読めば、だいたい共同通信の原稿のからくりは理解できると思いますので、踊るさんだけでなく、皆さんもぜひ読んでみてください。



ここから先は、総務省が新たに7月から設置するという第三者機関(つまり規制)についての考察となります(これは変わらない)。

多分総務省の思惑はこんな感じ。とりあえず「ネットは怖い」ということにしておいて、規制をかける理由にする。プロバイダとかブログ提供会社とか、SNSの会社とか、ベンチャーが多くて、政府や官僚のような「偉い」方々に敬意を払わない人々を規制の網で一網打尽にしてしまおうという計画。業界をコントロールできるし、第三者期間を(財)ネットユーザー保護協会(仮称、既にあったらごめんなさい)などと適当な名前をつけた団体に昇格すれば天下り先も確保できるし、一石二鳥。R30氏が書いていた例の会合でも、「総務省か経産省、場合によっては警察庁も狙ってる」「うまく省庁を天秤にかけて、かわさなきゃいけない」との話が出ていましたが、とっくに官僚様方は手を打っていたという間抜けな話。

しかしまあ、お上から命令が出ないと、動かない業界も業界だが、「ネットだから何書いてもいいんだろ?」「匿名だしばれないや」という行動をやめないネットユーザーが最も罪深い。「実名なんて登録するわけないでしょ」などとうそぶいている人がいるかもしれないが、別にネット利用にクレジットカードの利用を義務付ける(別に義務付けなくてもいい。サービス提供会社をそちらの方向に持っていけばいいわだ。規制とかちらつかせて)とか、方法はいくらでもあるし。しかし、ネットだろうがなんだろうが、ルールを守らない人は必ずいるわけで(偽造カードを使うとかね)、結局はごく一般的なユーザーがどんどん不便になっていくというお約束の展開。そして新聞は例のごとく、省庁の天下り先の確保と一般ユーザーの不便を何も考えずに後押ししているということで…。