ガ島通信

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「20世紀少年」浦沢直樹

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (18)浦沢直樹)。ずいぶん以前のエントリーで寝屋川の事件について「そして先生は神になった」というのを書きました。コメント欄での議論があり、大学教員の方から「俺は逃げます。死にたくないから。」とのTBも頂きました。追記部分で私は『人間の弱さを否定し、格好いい、威勢のいい言葉を並べ立てることは、罪深いことだと考えています』と書いています。

この20世紀少年は、その人の「弱さ」と「内に秘めた強さ」を描き出す浦沢作品の傑作です。(以下ネタばれあり、18巻。読んでしまった方すいませんでした)

追い詰められて武装蜂起に突き進むカンナ。マフィアと一緒にワクチンを打ったが、実はカンナを生かすための大芝居だったことを知り『あたしは本当は打ちたかった。自分ひとりだけ生きたかったからワクチンを打ったの』と激白します。オッチョは言います『命が危ないと思ったら、一目散に逃げろと言った男がいた… お前の中でその男は生きているはずだ』と。
こんないシーンもあります。インチキプロモーターの万丈目は「ともだち」(後の世界大統領??)をロープで巻き上げます。『浮いている』そのときの観客の顔…。『なんでもいいんだよ。彼らは、なんでもいいから… 信じたいものがほしいんだよ』。
弱さが作り上げる「虚構」は、弱さを認めなければ認識することはできないのかもしれません…