ガ島通信

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追求・北海道警「裏金」疑惑

追及・北海道警「裏金」疑惑 (講談社文庫)
最近ライブドアのことばかり書いていたような気がするので、少し話題を変えて気分転換です。新聞協会賞、JCJ賞、新聞労連大賞、菊池寛賞の4冠を達成した北海道新聞取材班の力作「追求・北海道警裏金疑惑」と道新取材班の中心メンバーとジャーナリスト大谷昭宏、突破者こと宮崎学との対談などを収録した「警察幹部を逮捕せよ」。報道の中心にいる高田昌幸さんは、裏金問題を終わらせないためにブログ「札幌から ニュースの現場で考えること」を発信し続けています。
「道警…」にも書いてありますが、警察の裏金問題はずいぶん以前から高知新聞が懸命に取材していました。それが今、北海道、愛媛に広がっています。残念なのは北海道、愛媛ともにテレビのスクープを「追いかけている」形になっていること。本来であれば道新が得た各賞は、真のスクープであった高知に与えられるべきだったかもしれません。

とはいえ、現在進行形で裏金問題を掘り下げ続けている道新、高知新聞、愛媛新聞には頭が下がる思いです。高田さんと以前にお会いしたときに「裏金はどこでもやっているんです。取材は文化部でもできますよ」と言われ、私は思わず目をそらしてしまいました。警察と一戦を構えるというのは、非常な困難を伴います。特に地方紙は長い間、その地元の警察とある種の「信頼関係」を築いた上で取材を行っています。その信頼関係とやらは、もちろん警察の悪口を書かず、自らが警察組織の一員となったような気持ちで「取材」するものです。私は「どっちが甘いのか」でも書きましたが、ネタを取らねばならない記者にとっては警察とうまくやったほうが楽です。大谷氏も『(朝日の)警察庁担当の大ボス記者が警察OBが数多く天下っている組織に再就職したという噂もある』などと記者と警察の現場での癒着も指摘しています(だからこんな シミュレーションになるのか!!!。警察官を疑うという視点はゼロだもんな〜。あ、皮肉ですよこれ)。それを、ご破算にして警察という巨大な組織の不正に挑むのは相当な思い切りが必要です。社内外からの妨害、説得もあるでしょう(警察とうまくやってきた人が社内に多ければ、一層取材が難しくなる)。それらの困難を乗り越えて、取材を続けている取材班には敬意を表します。

すべての記者が社会部員ではないし、警察裏金問題だけが取り組むべき課題ではありません。それぞれに、それぞれの取り組むべき課題やテーマがあるはずです。ただ、現在警察を担当している記者は、この問題から逃れることは出来ないはずです。放置するのは官僚の「不作為」同様、職業的な「罪」です。知る権利なる名目で警察本部の記者クラブにふんぞり返っているなら、せめて税金の適切な使い道ぐらい調査すべきです(使い道に関する提言などはイランのよ)。特に北海道、高知、愛媛の他の社の記者は何をやっているのでしょうか? 少なくとも「記者日記」など書いている場合ではないことは確かです