ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

フジサンケイグループの対抗策と産経新聞の「正論」路線

ニッポン放送ライブドアに対抗して新株予約券を発行することを決めました。私は、商法や株取引については素人ですが、なんとなく「汚いな〜」という印象を持ちました。上場している企業が自由に新株を発行できるなら、TOB敵対的買収も無意味になってしまいます。株式市場には市場原理が存在しなくなる可能性があります。もちろん「できる限りのことをする」のは企業防衛上当然ですが、ニッポン放送のやり方はライブドアと倫理的にはあまり違わない気がします。「何でもありでは困る」とライブドアのやり方を非難してきた一部マスコミや政官財の人々が同反応するのかも興味があります。

新聞各社も紙面を大きく割いて報道しています。「大量新株疑問視も」(読売)、「訴訟リスク背に賭け」(朝日)、「既存株主を犠牲の批判」(毎日)、「過剰防衛と紙一重」(日経。連日掲載されていたQandA方式は比較的分かりやすかった)と事実関係だけでなく、会見の模様や新株発行の問題点やリスクも紹介しています。特に日経の「問われる公共性の中味」との解説風記事(西條都夫編集委員)は『ニッポン放送=フジ連合は何を守ろうとしているのか。単なる組織防衛なら上場企業としてルールを逸脱していると言わざるを得ない』『そこまで「公共性」を強調するならフジやニッポン放送の番組の質が厳しく問われる』と厳しいトーンでフジの動きを批判しています。


渦中の産経新聞は、大量発行への疑問をアリバイ程度に書くのみ。さらに、主張で「共に冷静に考えてみたい」と宿敵朝日新聞との共闘戦線を呼びかけるという迷走ぶり? 『新聞ジャーナリズムの言論性』をライブドアが無視していると主張していますが、「正論路線」を維持(つまり守ろうとするものか?)するために新株発行の問題点や市場主義経済に与える影響をほとんど書かないのが、新聞ジャーナリズムの言論なのでしょうか? 思想、信条ではなく、ある一定のルールと資本の論理によって動いているのが資本主義社会のはずです。『民主主義と自由のためにたたかう』『社会主義国のイデオロギーや軍拡路線、非人間性を批判してきた』(18日主張より)というのが正論路線なら、いくらグループ会社が関係していようとなかろうと、自己都合によるルール解釈(可能性がある)は厳しく指摘すべきでしょう。それが「編集権の独立」であり「ジャーナリズムの精神」なのではないでしょうか? 路線、つまり思想や信条が社会のルールの上位にくるのであれば、宿敵朝日どころか朝鮮中央放送すら笑えません。

会見で日枝フジテレビ会長が「受けて立つ」と発言していましたが、ニッポン放送とフジテレビは裁判覚悟なのでしょう。一方、商法では経営権の維持・保持を目的とした増資を禁じていることから、フジ側は「企業価値を守るため」という理論を持ち出しています。堀江社長は「シナジー効果が見込める」とたびたび発言しており、堀江社長の提案をプレゼンテーションさせる機会も与えず、「フジに残るほうが企業価値が上がる」というのは理解不能です。それに、企業価値の判断というものは、上場企業であれば最終的に経営陣が行うものではなく株主や市場が行うものなのではないでしょうか?

時間外取引外資リーマンブラザーズ頼みの資金調達、堀江社長の「資質問題」など、どちらかと言えばライブドアに逆風気味だった今回の買収劇。フジの劇薬行使によって、「汚さ」ではイーブンになったのかもしれません。問題世論の風向きです。堀江社長がなんとなく嫌いだった人が溜飲を下げるのか、同情するのか、フジのやり方を「ライブドアより汚い」と思うのか。政官財、そしてマスコミも世論の動向は無視できません。それに、商法違反が疑われるなら民事だけでなく刑事としての司法判断、警察・検察当局の動き(※文章を一部修正。言葉足らずでした)も気になるところです。*専門的な解釈などはこの方などに任せたい。


書き終えたらところR30さん経由でこんな話を見た… ほりえもんは『死なない』(爆)らしい うーん… 不死身なんすか!?

追記(2月25日) 「受けてたつ」と堂々と語っていた日枝会長(そもそも、まず受けて立つのはニッポン放送で、フジテレビではないわけですが…)ですが、他社の報道に注文を付けたりとやや姿勢に変化でしょうか? 風向きが変わりつつあるのかもしれません。ところで、何か問題があると「抗議電話何件」「意見は○○が多かった」とか報道するのに今回はありません。フジにどんな意見が寄せられているのかも気になるところです。

追記(2月26日) 日枝会長が「ライブドアは株主として歴史ない」という発言をしていました。株主に歴史とか必要なんですかね?歴史がないと業務提携の話ができないの? もう意味不明…。フジテレビも「大人げない」。ニッポン放送ライブドアの業務提携話を「聞かせれば」いいのに。断る理由はいくらでもあるはず。アリバイ作りもできないぐらい冷静さを欠いているようでは、ライブドア批判も空虚に感じてしまいます。