ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

新聞デザイン論争に参入!

新聞のデザインについていくつかのブログが取り上げていました。中高生向け紙面をリニューアルするにあたってレイアウト、デザインについては相当研究しました(*参考「小さな勝利宣言」)。まずチームのデザインへの意識を共有・向上するために、他紙の同じような紙面、今や伝説となりつつあるセブン(朝日の週刊新聞)を取り寄せました。さらに、タウン誌、レイアウトやビジュアルの質が高い、ファッション誌(リラックスやpen、CASA BRUTUSなど)、デザインの専門誌、Numberなどグラフィックに力を入れたスポーツ誌も書店でチェックするだけでなく、大量に買ってきて会社のデスクの近くに並べました。リニューアルして約2年。今私がどう思っているか… 一言で言えば「新聞は今のままにして、別の紙媒体を出して勝負せよ!」ということです。

まず、今の新聞デザインがいいかどうかを話す前に、紙面を変えようとするとどんなことが起きるか。管理職や無能な事なかれ主義者がブーブー言うのは当然なのでもう無視するとして(これを書き出すと連載になってしまう)、ハード的側面で言えば輪転機、紙質、新聞を組む機械の問題。ソフト的な側面で言えばデザインを担当する整理部、デザイン部のセンスの問題があります。

輪転、紙質は写真やデザインのクオリティーを上げるのに最大のネックです。まず、ほとんどの輪転機には乾燥機がついてないので、色写りがあります。紙は質が悪い(例えばセブンは紙粉がでない紙を使い、印刷は大日本印刷で行っていた)。そして制作機械は段、罫などの活版時代からの新聞制作をベースにしているので、新聞風につくるのは得意でも自由なレイアウトは苦手です(スポーツ紙では違う機械が入っている)。整理部員の頭もなかなか切り替わらず、ついつい「何段?」と聞いてしまう。最初のころは「自由にやってよ」と言うと困惑した表情を浮かべていました。そして、新聞のデザイン部はおおむねダサい(猫手さんスンマセン)。マックを使える若い大学生あたりに、素材を与えてデザインさせたほうがよほどましと何度思ったことか。つまり、ハード、ソフトともに質を求めれば外注。そうなると賃金闘争一直線、外部化反対の労組が黙っていません。「外部化反対!」「団結ガンバロー」(笑)。はい、ストップです(新聞労連で地雷をワザと踏みまくる私としてはもう少し詳しく書きたいのですが「紙面」(笑)の都合もありますので、またの機会に)。

おっと脱線。それでもアナタは頑張ってデザインを変えた(多分格好イイもの)。しかし、あまり評判がヨロシクナイ。それはそう。顧客は新聞的デザインに慣れ親しんでいる。「新聞がダサい」と思っている人はとっくに読まなくなっているのです。つまり、デザイン変更は手間がかかる割りにリターンが少ない。費用対効果の点でお得ではありません。それに、いくらデザインを変えても紙の質が低すぎてお話にならない(この点R25は紙の質感、デザインなどを綿密に考えているように思える)。格好いいデザインのロゴや見出しだけをデザイン部が作っても新聞紙の上にのせると、とたんにダサくなる。格好イイイタリア車からジャージでスリッパのさえない男が降りてきた違和感(決してジャージでスリッパの人を責めてるわけじゃあないです。雰囲気の問題ですね)のようなものです。思いっきり主観ですが「何か違う」んです。

例えば、朝日のbe。日経のプラス1という土曜日別刷りはどうでしょう。beは今の機械で頑張って、頑張ってる。写真の大きさも新聞規格外ですし、ロゴのデザインやレイアウトも凝っている。けど、あまり話題になっていないように思います。ブラス1は、そんなに規格外ではない。やや頑張っているぐらいの感じです。しかし「行きたい温泉ランキング」とか「バレンタインで買いたいチョコ」とかランキングも面白い。さらっと読んで、面白ければ「今日こんなの書いてあったよ」「行きたいね」という話題になるでしょう。日経はそこらへんを狙っている気がします。無理せず、新聞の紙媒体の特性を割り切って考えているのではないでしょうか? 日経は本紙も非常にオーソドックスな作りでカラー記事などもほとんどありません。本紙をいじらず、周辺の雑誌群やネットでカバーするという日経の戦略は、地方紙にはそのままは使えませんがヒントを与えてくれている気がします。

現状の紙はあまり変えず、団塊の世代あたりまでをターゲットにして彼らが新聞を読まなくなるまで吸い尽くす。旧来型ビジネスモデルですが、まだまだお金になりますし。「その間に、現在の30歳以下あたりの世代をターゲットに別の媒体(紙でも可)でニュースを売りながら、儲けるスベを考えねばなりません。これが分かってれば今頃私も会社辞めてベンチャーやってますが…  もしよければ新聞関係者だけでなく、読者の方からもご意見をお願いします。

関連ブログもぜひご覧ください。地方都市日記「あらためて新聞デザインを考える」、猫手企画@新聞屋「地方紙はデザインで変革できるか1」「」(現状輪転の限界と紙にまだチャンスがあるという点で私とかなり近いと思います)、愛と妄想の日々。「見せ方から中味を変える」、RemeberMe「新聞のデザインを考える」。