ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

シマゲジとエビジョンイル

NHKの前会長・島桂次のスキャンダル(衛星打ち上げ時に現場にいなかった)を現会長の海老沢らが仕掛けたことが、以前にも紹介した魚住昭氏の著書「野中広務差別と権力」の第十章に「シマゲジ追い落とし」として触れられています。
野中広務 差別と権力 (講談社文庫)
詳しくは読んでもらうこととして、内容を簡単にまとめると

  • 海老沢は島の右腕として活躍していたが力を持ちすぎて切られた(理事を解任されNHKエンタープライズ社長へ)。
  • 海老沢は佐藤栄作夫人の姪と結婚。佐藤派、竹下派と太いパイプがあった
  • 海老沢派のNHK職員や元職員らが政界工作を行った
  • 島失脚は海老沢派、「島の態度に腹を立てていた」族議員と郵政省の動きがあった というところでしょうか。

私が在京の記者から聞いた話しでは、エンタープライズ時代にある政治家の葬儀にやってきた海老沢は、車寄せで雨が降っているのにもかかわらず傘も差さず、しょんぼりと立ち尽くしていたと言います。その姿を竹下派の幹部らに見せ付けることで、「海老沢が可哀想だ」という論調を引き起こした、ということです。虚実は不明ですが、それほど政治的な駆け引きが行われて、島はNHKを辞めることになり、海老沢は返り咲いたということでしょう。
魚住氏は、野中が「島氏が会長でいる限りNHKの自浄能力には期待できない」と言ったと紹介していますが。島を海老沢に入れ替えても同じじゃないでしょうか?
確かにNHKぐらいに大きな影響力を持ち、政治に近い組織になると、人事などは最後は政治家たちのテリトリーになるのかもしれません。そうであれば、いくら日放労がトップを変えようと頑張っても難しいし、内向きの組織ではあのような活動は危険すぎます(「日放労の決断」を参照)。私は現時点で日放労は頑張っていると思います(あざらしサラダさんは労組に厳しいご意見で、ごもっともと思いますが、現実にはあれが精一杯でしょう)。仮に、日放労が海老沢の首を飛ばそうと政治家などにロビー活動を行っているのだとすれば、島を追い落とした海老沢派と変わりませんし…。今回私が「受信料の支払いを拒否してもいいのではないか?」というスタンスなのは、視聴者一人ひとりの行動によって会長の座を追われる可能性がある、ということを示しておいたほうがいいのではないか?と思ったからです。支払い拒否が法律的にまずければ、支払いを延期し、後から支払うということもできるのではないでしょうか(する人はいないかも知れないけど…)?
今苦しんでいるのは受信料を徴収するスタッフの人たちで、NHK職員は給与が下がるわけでもなく、別に苦しんでいるわけではありません。これは新聞を読む人が減っているのにも関わらず、その実感を伴わない新聞社員たちが大勢いるのと同じ構図ですが… その経験を照らし合わせるなら、今回のNHK批判は海老沢らトップだけでなく、ほとんど職員に届いていないと思われます。だから「われわれは被害者」という言葉が出てしまうのです。
非常に逆説的ではありますが、受信料支払い拒否が相当広がって、給与や制作費に響くレベルになる。そんな厳しい雰囲気にならなければ職員は永遠に社内闘争と郵政省、政治家との癒着に目を向け続け、視聴者に目を向けることはないでしょう。余計なお世話かもしれませんが、NHKでごくたまに見る良質な番組を評価するからこそ、厳しい言葉になってしまうのです。ただ、私は決して「みんなで支払い拒否を!」と煽っているわけではありません。以前にも書きましたが、最終的には一人ひとりが判断することです。私はNHKを変えるとすれば、拒否という方法ぐらいしかないと言っているだけなのです。