ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「紙」の現状と将来

私が読んでいる2つの新聞関連ブログで新聞の未来と現状について、相次いで記事がアップされていました。共同通信の署名で書く記者の「ニュース日記」(最近本当に面白くないのですが…)の「新聞の未来」と愛と妄想の日々。さんの「パソコンのトラブルって」(他にも新聞を考察した記事あり。「マスコミについて、列挙してみた。」を参照)です。
愛と妄想の日々。にはパソコンが壊れて困った話を書いた後『試しに新聞を読むのを1週間やめてみましょう!みたいな「祭り」がもし起こったらどうなるだろう。死亡診断が告げられるのは意外と早いかもよ』と書いてありました。これは私も以前から危惧していたことです。新聞は習慣性のものですから、「なんとなく読んでいる」人のいかに多いことか。というより、中高生紙面を担当している経験から言えば、ほとんど読んでいない(ですから今は新聞に親しんでもらう、とにかくページをめくってもらうための紙面を作っています)。さらに、新聞には加齢効果がないことも統計的に明らかになっています。就職したら読むだとか結婚して家庭を持てば読むというのは完全な幻想です。キャンペーンによって「新聞を読むのはダサい」とか「まだ読んでるの?」というムードが広がれば、一気に崩壊する危険性があります。
それに対して共同ブログでは『確かに100年、200年後に「新聞」があるか−と言われれば分かりません。毎朝配達員の方々が配ってくれる「新聞」というは姿がない可能性が高そうです』と書きつつ紙の優位性を書き(意味が分からない)、『「媒体が変わっても、情報を求める人がいるのは変化がないはずだ。ぼくらの核はニュースでしょう?」という言葉』が議論を制したと書いてあります。
そんなことはずいぶん前から言われている話。こんなことで議論が終わるなんで、ちょっと信じがたい
ここで新聞社がいかに利益を上げているかの話をおさらいしておきたいと思います。基本的には販売と営業(広告)の2本柱(他にも野球やなんだで儲けているところもありますが…)。ただ、この2つは密接に結びついています。新聞の広告料金は、ほぼ販売部数によって決まるため、部数が減ってしまうとダブルパンチということになるわけです。
共同通信の社員に聞きたい。「いったい誰のおかげで給料をもらっているのか?」と。取材して、整理して、印刷して、配る。新聞社員だけでなく、販売店まで含めたインフラ(無駄が多いという指摘もありますが)が今の新聞を支え、さらにはそこで儲けたお金によって各社が共同に加盟料を支払っているということを。ニュースを取材してバリュー付けできる経験があるから紙の新聞が売れなくなっても、大丈夫だと思っていませんか?確かに「紙」がなくなっても、ニュースを発信する機能が残る以上、通信社は生き残るでしょう。しかし、「ニュースを販売する」というビジネスは現状のままでは非常に収益を上げるのが難しい状態のはず。ヤフーなどのポータルから支払われる配信料は相当少ないようですし、お金を生まないグーグルニュースも存在しRSSリーダーも普及し始めています。
優位性は先に書いたように幻想だと考えています。もちろん完全にはなくならないでしょうが、相当部数が減ることは覚悟しなければならないと思っています。そこが最も今問題になっているのです。
新たなビジネスモデルが見つからない以上、「紙は一覧性があって優位だ」とか「ニュースがあるから大丈夫」という結論が出るわけがないのです(結論が出なかったのなら理解できますが)。あんな汐留の高層タワーに閉じこもっているから下界のことが見えなくなっているのではないでしょうか?その会合にいた方もずいぶん認識が甘いように思います。皆さんで一度販売店か拡張を経験することをオススメします。

新聞労連青年女性部が今年1月に行った新聞の現状と将来を話し合った会合「本日廃刊 …となる前に」をまとめた冊子があります。「ネットは新聞を殺すのか」の著者・青木日照氏(NEC)の講演。インターネット放送局ビデオニュースによる協力で実現したビデオジャーナリスト神保哲生氏と東京都立大学助教授・社会学者宮台真司氏によるマル劇トークオンデマンド「新聞ジャーナリズム論」。若手の新聞社員が販売、経営、整理など各分野から議論したセッションの議事録を収録しています。1部500円(送料別)。現在新聞業界で働いている人だけでなく、就職を目指している大学生にも読んでもらいたい冊子です。


販売している新聞労連の協力を得ることができました。購入希望者はE-mail : hai-kan@shinbunroren.or.jp にご連絡ください。