ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「渡邉恒雄 メディアと権力」魚住昭

渡邊恒雄 メディアと権力 (講談社文庫)
プロ野球問題でも話題になったナベツネこと渡邉恒雄元巨人軍オーナー・読売新聞社主を元共同通信の記者・魚住昭氏が書いたのが「渡邊恒雄 メディアと権力」です。
メディア業界においてこの本を読んでいない人は「もぐり」かもしれません。とにかく読み始めると止まらない。野中広務中曽根康弘ら政治家に頭を下げさせ、裏で政界再編をしかけ、多額の裏金が動いたとされる公共事業でうごめき、読売本社の土地を政治工作で政府から安く手に入れる。そして、読売内部での権力闘争。駆け引きと裏切り、恫喝、権謀術数。地方紙の記者からすれば「新聞記者(特に政治部)って中央でこんなことやってるの!!!」と驚くやら、あきれるやら。とにかく読んでほしい!特に現役の記者やこれから記者を目指す人には。ナベツネさんのバックボーンを知るのはもちろん、政治家と政治部記者の関係はもちろん、メディアと政治、官僚の腐ったトライアングルも理解できます。
それにしても、ナベツネさんの親分に取り入る見事さ(テレビで見ていても、妙に憎めないというか、かわいらしいところがある気がしていましたが…)と自分の反対勢力を徹底的に痛めつけるさまは、恐るべし…。同時に人は恐怖によって支配されてしまう弱い存在なのだということを改めて実感してしまいました。それに、これらの出来事はすべて現在進行形。ただ、私が思うに、ナベツネさんも、自身が裏切りや恫喝で権力を奪取してきたように、最後は誰かに裏切られるのではないでしょうか。そう考えると哀れすら感じます。
最後に、魚住氏の取材力、筆力に脱帽。どんなにがんばっても、生まれ変わっても、こんな「戦慄のノンフィクション」は私には書けそうもありません…。自分の凡人ぶりも実感した次第です(涙)

《関連する著作》
読売新聞や日本テレビ・巨人を大きくした正力松太郎を書いた巨怪伝〈上〉―正力松太郎と...文春文庫(著・佐野真一
読売で販売の神様と呼ばれた務台光雄を書いた新聞の鬼たち―小説務台光雄光文社文庫(著・大下英治)
本人の言い分も聞いてみよう
渡辺恒雄回顧録
天運天職―戦後政治の裏面史...
私のおおススメは巨怪伝です。

「aurora」さんコメントありがとうございます。メディアの興亡 (上)文春文庫は、新聞制作をコンピューター化する過程を丹念に追いかけたルポです。このときと同じような「大変革」が今新聞界に起きているのかもしれません。