ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

メ社オープンゼミに向けてリ・パブリックでの「出張ラボ」実施中です

大学は夏休みに入っていますが、藤代ゼミは8月11日に開催される「メ社オープンゼミ」の運営・広報を担当しており、連日作業中です。

本拠地である法政大学多摩キャンパスでは、アクセスが悪く(時間に加えてバス代が重い負担)、21時までしか使えない(20時40分には警備員が警告にくる)ために、満足な活動が出来ないことから、湯島にあるリ・パブリックのオフィスを一時的にシェアさせてもらう「出張ラボ」を実施しています。

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時間的な制約がないので、じっくり考え、話し合ってチームの合意を作ることが出来ます。その中で、ぐっと成長する学生が出るのも面白いところ。ゼミ生は、近くの湯島天神に行ったり、ランチに行ったり、街を楽しんだりもしているようです。

「出張ラボ」は単に作業の時間を確保するためではありません。

慌ただしくゼミを終え、バイトやサークルに向かう学生たちに、一つのことにトコトン向き合って行くことで、体系的に物事を捉える力が作られ、自分の軸足が定まっていく経験をしてもらいたい、という想いがあります。

授業が終わるとキャンパスから潮が引くように学生がいなくなる多摩キャンパスを拠点にする中で、「学びの場」というものはどういうものであるべきなのかということを、考えるようになりました。事前にリ・パブリックの皆さんに、キャンパスの現状や問題意識を説明し、それならと快諾頂いたのでした。

「出張ラボ」はなかなか良い感じです。

リ・パブリックのスタッフやインターンとランチに行って話したり、ちょっと雑談したりして、お互いに刺激があります。知り合いが遊びに来てゼミ生にアドバイスをしてくれたり、OGが差し入れをもってやってきます。

学生は人と街に育てられるのだなと改めて思うのです。

『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』が第29回地方出版文化功労賞を受賞しました。

全国の地方出版物を対象にした第29回地方出版文化功労賞(ブックインとっとり実行委主催)にローカルジャーナリスト田中輝美さんと法政大学藤代ゼミで出版した『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』(ハーベスト出版)が選ばれました。

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

  • 作者: 田中 輝美,藤代 裕之,法政大学藤代裕之研究室
  • 出版社/メーカー: ハーベスト出版
  • 発売日: 2015/08/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

 応募はなんと約500点もあったそうです。功労賞は一番良い賞で、過去2年は該当作品ナシだったとのことで、高く評価頂いてとてもありがたいです。奨励賞には「獄中メモは問う 作文教育が罪にされた時代 (道新選書)」(北海道新聞社)が選ばれています。おめでとうございます。

地域ではたらく「風の人」という新しい選択の受賞理由は以下の通りです。 

<受賞理由>

①もともとは普通の人(少なくとも地域活性化に強い関心を持たなかった人)がそれぞれの活動で大きな足跡を残す過程を、取り上げられた人の本音とともに、生きた言葉で語られることが驚きと納得感、さらには読後の充実感を与える。
②地方には一片の興味もなかった者もいる学生たちが、地域で働くことの意義をそれぞれなりに考えてインタビューを行っており、また、その反作用も含め、各章末の取材記に(模範解答ではない)光るものがみられる。
③学生、指導教員、ローカルジャーナリストの三者の立ち位置や考え方の違いがうまく作用し、類本を一歩超えた「多くの人に読んでもらいたい」本となっている。

 

この本はもともと田中さんとの共著で企画していたのですが、幾つかの出版社に持ち込んだものの通らず、クラウドファンディング(FAAVO)を使って資金を集め、ハーベスト出版が引き受けてくれたのでした。詳しくは以前の記事に書きました。おかげで、煽ったタイトルではなく、伝えたいタイトル、シンプルで素敵な表紙、冒頭にカラーページを入れるという贅沢な本に仕上がりました。

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賞は多くの支援者の方、伴走してくれた編集者、拙い学生へのインタビューに応じてくれた風の人の皆さんのおかげです。みんなで一緒につくった本。まだ読んでない方はぜひ読んで見て下さい!

伝わるためには「引き算」の編集が必要

4月から福岡の伝統工芸「博多織」の担い手を育てる博多織デベロップメントカレッジ(DC)のユニット・ディレクターとして「ストーリー表現」を担当しています。

博多織DCでは,博多織という伝統工芸の枠組みだけではなく,福岡から「世界に通用するクリエーター」の育成を目指しています。ビジネスと感性を融合させて,伝統文化の新しい時代を実現する人材を育成するため,これまでにない新しい教育プログラムを実践していきます。(福岡市HPの博多織DC 研修生・聴講生募集から

ディレクターには、イノベーション理論の研究者である一橋大学の鷲田祐一さんや、ファッション・デザインで知られるSFCの水野大二郎さんら、錚々たるメンバーが揃い、地域発のクリエーターを育成しようとしています。

「ストーリー表現」は入ってきたばかりの6人の研修生が受ける一番最初のユニット。社会人経験があったり、高校を出たばかり、だったりと多様な背景を持つ研修生同士を知り、お互いをインタビューして記事を書いて、冊子にまとめます。

冊子は記事というコンテンツを包むパッケージ。いくら記事が良くても、パッケージがダメだと、読者に手にとってくれません。そこでよく編集は引き算と呼ばれます。コンセプトを決め、ターゲットに合わせ、たくさんの素材の中から不要な部分を削り、読者に届くように工夫します。

引き算ができていない編集は伝わりにくい

研修生が、ちょうど博多駅西口にできたばかりのKITTE博多のパンフレット(開店を宣伝するもの。街頭で配布していた)を持っていたので、引き算が出来てない編集の事例として取り上げました。

コピーは『いい休憩をしよう。』。さて、このパンフレットでは何を紹介されているのでしょうか。休憩スペースが設けられていたり、緑が施設内に配置されていたり、人口の川が流れていたり?リラックスできるお店が入っているのか…

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中身は飲食店街の紹介でした。『いい席あります。』という新しいコピーが出てきました。食べたいトキに、食べたいモノを、食べたいシーンでおもてなし。と書いてあります。どうやら休憩=食べるということのようですが、ちょっと分かりづらい。『いい休憩しよう。』からの『いい席あります。』は勘違いした代理店の人とかがやりそうな展開のような…

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日本郵政のリリース(PDF)によるとKITTE博多のコンセプトは『だれでも、気軽に、毎日でも』で、特徴の一番最初に挙げられているのは「一大飲食ゾーン誕生」との見出しで、50店舗のうち21店舗が九州初出店と書かれています。リリースとパンフレットのコンセプトすらもバラバラ…コンセプトを統一し、メッセージは絞り込むことが重要で、あれもこれもと言葉を出してくるのは引き算の編集が出来てない証拠です。

研修生に話し合ってもらうと、福岡の人は「九州初出店」には結構弱いので、表紙に打ち出したらどうかという話になりました。飲食店が大半というパンフの中身、リリースの打ち出し、からしても妥当だと考えました。

人間国宝に伝わるパッケージとは?

さて次は研修生たちが、自分たちを紹介する冊子をどうするべきか考える番です。KITTE博多と違い、ターゲットは博多織の先生(人間国宝!)や関係者と分かりやすいのでコンセプトは絞り込みやすいはず…

しかし議論は進みません。近づいてくる終了時間。焦る研修生は「どんなコンテンツが必要?」「デザインどうする?」とアウトプットの話をし始めます。そこで聞いたのは「この冊子を読んで欲しい人が大事にしていることは何ですか?」です。明らかに「こんな時に面倒だな」という雰囲気が広がります。

最初は「本質?大事なこと?うーん」と沈黙が続き、すぐに目の前のアウトプットの話に戻ってしまいます。少し議論をフォローすると、出てきたのが「規則正しさ」でした。先生は「整理する」「順番を守る」と口癖のように言うそうです。

規則正しさというコンセプトが決まれば、素材であるコンテンツの不要部分を削り、先生がよく見ていそうな媒体で規則正しいイメージがあるものに合わせて、表紙のデザインを「真似」してもらいます。

研修生が選んだのは、文化団体の会報でした。そこで出来上がったのが下記の表紙です。  

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コンセプトを決めずに真似しない

ここで、パッケージを模倣するのだったら最初から真似だけをすればいいという意見が出てきそうですが、そうすると誰に、どんなことを伝えたいのか、というコンセプトがずれてしまうのです。

コンセプトが決まり、伝えたいことの本質が共有されるからこそ、模倣でもなんとかなります。オリジナルを作るときは当然その作業が必要なので、模倣ばかりしているとオリジナルは作れなくなってしまうのです。

なんとか時間内に終わりそうと胸を撫で下ろした時、冊子を見ると最後のページに変なコンテンツがありました。これは、きのこの山が好きという話をしたことを聞いていて、「ストーリー表現」担当者の私の紹介も入れてもらったのですが、これは明らかに蛇足で、せっかくの規則正しさも台無しです。このページを外すように伝えて、冊子は出来上がりました。

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配慮こそが引き算の最大の敵

きのこの山を使った紹介というアイデアは面白いし、加工して作るのは手間もかかったでしょう。そうすると「せっかく作ったので入れよう」となってしまうのです。研修生への配慮、そして担当者の私への配慮が、せっかく引き算した冊子を分かりにくくするところでした。

ちなみにKITTEのパンフレットは表紙を開いたすぐのページはマルイやユニクロ福岡大学の施設の紹介があり(単に概要が書かれているだけ)、3ページ目から飲食店街になります。「テナントもあるのでまず紹介しておこう」と配慮したのでしょうかね。でも、それは読者には何の関係もないことです。

なぜMARCHの学生は、大学に入ったら東大生より勉強しなければならないのか

4月半ばを過ぎ、大学1年生の皆さんもそろそろ最初の緊張感が失われ、アルバイトも始まり、サークルなどで先輩から「勉強なんてしなくていいよ」と囁かれる頃です。ですが、自分がなりたい職業や担いたい社会的な役割があるとしたら、大学の研究に真面目に取り組んで下さい。

まず、法政の1年生向けのガイダンスに使う図を紹介します。

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日々の努力は、時がたてばものすごい差として現れます。トップ校(東大・早慶など)の学生と、法政のようなMARCHレベルの学生と異なるのは子供の頃から積み重ねてきた勉強の努力差であり、入学時点で既に差がついています。

法政の学生がこれまでの努力を続けても、トップ校の学生とは差が広がる一方なのです。大学での学びをやめてしまえば、もっと広がってしまいますよ、ということを話します。

大切なことは可能性を広げること

この話は、トップ校の学生が偉いとか、勉強が出来る人間が良い人生を送るとかを言っているわけではないことに注意してください。努力を積み重ねることで、自分がなりたい仕事を選んだり、良い人脈に出会ったり、チャレンジ出来る可能性が高まったり、という選択の可能性が広がるということなのです。

努力は、勉強でも、スポーツでも、芸術でも、会社に入った後でも、取り組んでいく必要がありますが、勉強以外は、外部環境や人間関係といった「変数」が多く、ただ努力しただけでは成果につながりません。ですが、偏差値は努力が結果につながりやすいのです。勉強という努力ができない人が、起業や社会に出て努力できるかというと怪しいわけです。

「これまで出来てませんでしたが、頑張ります」という言葉を信じるほど企業はお人好しではないので、就活時の学歴フィルターというのも、合理的な判断だと言えるでしょう。逆に言えば、大学でしっかり学んだことを説明すれば、それが実績となり多くの企業は受け入れてくれます。

大学は、勉強という成果が出やすい努力で勝負ができる最後のチャンスです。だからこそ、MARCHの学生は、東大生より大学で勉強しなければならないのです。

自らの環境を把握する

成長するためには多様な構成員が必要とされています。トップ校はそれ以上の大学がないので、ものすごく出来る学生も、ギリギリ受かった学生も混じります。地方からトップ校に行った人で多く聞くのは「自分が一番出来ると思っていたけど、全然ダメでショックを受けた」というものです。

むろんそこで挫折してしまうトップ校の学生も多いのですが、勉強が出来るだけでなく、勉強に加えてスポーツが出来る、本をものすごく読んでいる、頭の回転が猛烈に早い、などすごい奴を見て、日々の努力を続けなければいけないと考える学生もいます。努力の上に別の道を歩もうと知恵を絞る人もいます。つまり、トップ校は環境によって努力が上振れする可能性があるのです。

一方で、MARCHレベルだと、すごい奴はまれで、とんでもなく出来ない学生もいません。学生が均質化してしまい。「なんとなく自分たちが普通なのかな」と勘違いし、パフォーマンスを下げる傾向にあります。自らの置かれた環境をしっかり把握しておきましょう。

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逆転のチャンスはある

このような身も蓋もない現実を突きつけると、法政の学生は現実から逃避してしまうわけですが、逃げても何も起きません。学歴コンプレックスなど劣等感を抱えたままでは、良い方向には人生は向かわないでしょう。

逆転のチャンスはあります。それは学びの質が、大学入試までと、大学では異なるからです。入試までは「正解がある学び」で、大学からは「正解がない学び」になるからです。

代ゼミでは、メディア実践を行うだけでなく、研究を重視しているのはこの「正解がない学び」を実感し、考えられるようになってもらうためです。ただし、学びの質が変わってもトップ校の学生が努力出来るので、努力量がカタパルトのようになってしまいます。

緩やかな丘を歩いてたのに急にアルプスに登るみたいなものですから、滑り落ちる(ゼミを辞める)学生も多くいます。それまで楽をした自業自得なので仕方がありません。本や論文を読んで、研究して、考えて…登るしかありません。

カタパルトを登るために、本を読む(読書祭り)、企業や自治体との共同研究、良質な人的ネットワークの提供も行っています。

「正解がない学び」というのは思いつきではありません。自分の頭で考えるためには「正解がある学び」の積み上げが必要です。根拠が説明できないアイデアは例えうまく言っても再現性がありません。「正解がない学び」の面白さに気づいた学生は、もう一度本を読むなど基本的な学習に取り組みます。学びに楽なルートはないのです。

守破離という言葉がありますが、「正解がある学び」=守、「正解がない学び」=破、までがゼミの役割です。離=学生が社会に出て自分なりの価値を築いてくことです。

 

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大人の甘言は破滅の道

「自分の土俵をつくれ」とか「別の道もある」とか「偏差値だけで決まらない」とか言う大人もいますが、そういう甘言を聞いてサボったら破滅するだけです。先輩の言葉よりも危険です。勉強しても無駄なので起業や特殊な経験(芸能活動、自転車で世界一周など)を勧める大人もいます。それができるなら目指しても良いですし、出来る人はいいのですが、その確率(勝率)が何パーセントか考えてみましょう。

また、言っている人の大学や経歴を確認してみましょう。思いっきりトップ校だったりしますし、芸術家や起業家などいばらの道を生き抜いて来た人であったりします。いばらの道の生存確率は非常に低いのです。

むろん、こんな急なカタパルトは難しいので、平均よりやや上を狙いたいという学生がいても良いのです。私が所属する社会学部は教員も多く、学生に合ったゼミを選ぶことが出来ますし、もしくはゼミを取らずに別の努力をすることも可能です。要は学生のやる気と、覚悟次第です。

そもそも大学は勉強する所です。最近は就活時にもサークルやアルバイトの話をするのではなく、大学で何を学んだか聞かれることが増えています。高い授業料も払っているのです。スマホのゲームをやめ、授業をしっかり聞き、本や論文を読みましょう。ついサボってしまう人は、授業後に何時間か図書館で勉強するなどのルーティンを決めて、努力していく癖をつけていくことをおすすめします。自分の力を信じて努力を積み重ねて欲しいと思います。

努力は必ず誰かが見てくれている

MARCH以外の大学生、既に大学を卒業してしまった、という人もこの記事を読むかもしれません。努力し、学ぶことは、いつから始めても間に合いますし、キツイですがその努力を見てくれている人が必ずいるということも付け加えておきます。

安定していると言われた会社が次々とリストラを行う時代です、メディア業界も非常に変化が激しいのです。大学時代に特殊な経験ではなく、学ぶことを勧めるのは、会社に入った先も学び続けることが必要になっているからです。

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藤代ゼミでは野田市で生物多様性に関するシティプロモーション研究に取り組みました

法政大学社会学部藤代裕之研究室では、2015年度に千葉県野田市から依頼を受け「コウノトリをシンボルとした生物多様性に特化したシティプロモーションの研究」に取り組みました。3月末に活動を終えて市に活動報告を行いましたので概要を紹介します。

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調査:コウノトリ生物多様性が結びついてない

野田市からの依頼は、市が立案した生物多様性戦略に基づいて進めている「コウノトリが住めるような自然環境」をアピールしたい、特にソーシャルメディアでの対応を進めたい、というものでした。いきなり大学生の企画を、となりがちなのですが、まずは調査を行い、課題を発見し、分析する必要があります。

ゴールデンウィーク開けから、ゼミの時間などを使い、河井孝仁東海大学教授の『シティプロモーション 地域の魅力を創るしごと 』や論文を先行研究として学び、ネットなどで野田市の概要や歴史、生物多様性の取り組みを調査しました。

その上で、夏休みに清水公園のバンガローに宿泊し、現地の確認や街頭アンケート調査を行いました。野田にはキッコーマンがあり醤油の町として知られ、枝豆の産地としても有名だったり、イメージがばらけている状態でした。

市民は7割がコウノトリの飼育を知っているものの、生物多様性の推進という理由を知っているのは4割にとどまっていました(n-80)。柏・松戸などの周辺市ではコウノトリも知らないが7割(n-85)。市民の情報取得先は、市報が強く、ソーシャルメディアの利用は低調でした。ユーザーローカルの「ソーシャルインサイト」を活用した調査でも、市民の発信は低調ということが裏付けられました。

ゼミ生が注目したのは、コウノトリは市民には知られているが生物多様性と結びついてないということでした。

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提案:コウノトリ凧づくりで学ぶ

秋学期に入り、調査で明らかになった課題を解決するための企画案を検討、市に4案(コウノトリ丼コンテスト、凧揚げ大会、自然展、生物図鑑:野田マスター)を提案し、凧揚げイベントが採用されました。

イベントは小学生を中心に、子ども館でコウノトリ凧を作る際に、ゼミ生が生物多様性について説明を行い、子供を通じて保護者にも関心を広げて、コウノトリ生物多様性を結びつけるという狙いでした。チラシは小学校や保育所、子ども館を通じて配布するだけでなく、駅前やショッピングセンターでも配布し、カバー率を出来るだけ向上させる工夫をしました。

当初の企画案は、コウノトリの絵を描いた手作りの凧をあげるというものでしたが、実施に向けて市役所の方や関係者と話していく中で、子ども館が毎年凧揚げ大会を実施していること、市内にコウノトリの形をした「コウノトリ凧」を作っている団体があること、などが分かってきました。実施に向けた取り組みの中で資産を「発見」、それを「編集」することができました。

教室には201人が、大会は雪で一日順延しましたが144人の参加がありました。 

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課題:低調なソーシャルメディア

低調なソーシャルメディアを盛り上げるためにプレゼントを用意した企画を考え、チラシ配布、子ども館で保護者に声掛け、などの広報を行いましたが、これは低調なままでした。絵になるイベントで、ソーシャルで拡散を狙いましたが、これはうまく行きませんでした。

コウノトリ生物多様性の推進を結びつける事ができる「場」は提案できたものの、ソーシャルメディアの対応は不十分でした。その要因を、野田市自治会など地域コミュニティが強く、市報が浸透していること、ソーシャルメディア利用への不安があることから、市民への情報伝達にソーシャルメディアを利用する条件が整っていないのではないかとゼミ生は考察しました。

これらの施策と考察を踏まえた上での提案として

などにより、シティプロモーションを進めることが出来るとしました。

報告会では、市長から「子供に注目して、お母さんから学びを進める取り組みは良かったが、ソーシャルメディアでの広がりについては対応を考えていかないといけない。我々の課題だ」とのコメントを頂きました。

代ゼミの取り組みをまとめたパンフレット「コウノトリ便」を、自治会や小学校などを通じて市内の皆さんにお届けする予定です。

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取り組みに関して、野田市役所、子ども館、凧の会の皆さん、そして市民の皆さんに大変お世話になりました。

 藤代ゼミでは、一昨年の夏休みの合宿を足利市NPO「コムラボ」の皆さんの協力で行い、ワークショップで冊子「足利のたからさがし」を制作、昨年はローカルジャーナリストの田中輝美さんと『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』という本を出版しました。コムラボさんとは地域ライターの養成講座を行うなど関係が続いています。引き続き、地域からの発信者を増やす活動を進めていきたいと思います。

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藤代ゼミ課題図書「ジャーナリズムを理解する7冊」

代ゼミの課題図書「ジャーナリズムを理解する7冊」を紹介します。最近、フリーランスの方などから「ジャーナリズムに関するオススメの本はありませんか」と聞かれることも多くなったので、ゼミで読んでいた本を少し入れ替えて、ジャーナリズムとはなにかという根本問題からソーシャルメディアの登場によるメディアの変化を踏まえたものを幅広く揃えてみました。これまでの課題図書に「変化するメディアを知る7冊」「考える力をつける4冊」があります。

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日航機墜落という大事故を前にした地方紙の内側を描いた横山秀夫のベストセラー。現場に走る記者たち、遺族からの問いかけ、スクープを求める業(ごう)、部下が自分たち以上の現場を踏んでしまうことに嫉妬する上司、凄惨な現場を見て壊れる記者、社内の権力闘争…伝えるべきニュースとは何か、メディアの役割とは何か、揺れる記者をリアルに描いた傑作。ジャーナリストという仕事の課題、社会的役割もよく分かる一冊です。ドラマと映画がつくられていますがNHKが制作したドラマ版「クライマーズ・ハイ」がオススメです。 

駆け出しの新聞記者としてサツ回り(警察担当)をやっていた時に、他社の先輩記者から「読んでおけ」とプレゼントされたもの。短いですが4編どれもが非常に本質的で、取材し、伝えることの難しさ、多くの人に情報を伝える責任について考えさせられます。いまでも時折読み返す大切な一冊。誤報―新聞報道の死角』後藤文康と合わせて読むといいと思います。

本田靖春の著作はどれも魅力的ですが、一冊挙げるとしたらこれ。戦後の混乱期にスクープを連発したスター記者が、検察の派閥闘争に巻き込まれて逮捕され、新聞社からも捨てられていくという悲劇を描いた作品。破天荒な記者スタイルは時代の空気を感じますが、取材対象である権力との関係、そして組織との関係は、普遍的な事柄としていまでも何ら解決していないと感じます。

軍部に寄ってペンを奪われたーなどと第二次世界大戦時のメディア状況を書いている記者はこの本を読んでないのでしょう。小ヒムラーと呼ばれて言論弾圧のシンボルにされた鈴木庫三の日記を発掘し、資料や証言と突き合わせることで、軍とメディアの動きを浮き彫りにします。メディア研究者による本ですが、作られた「常識」を覆し、別の世界があったことを照らす作業はジャーナリズムそのものです。

ボスニア紛争時のPR会社の動きを追うことで、国家間の情報操作を明らかにした労作。PR会社や政治家たちの証言を丹念に置い、淡々と紹介することで迫力を増しています。この本を読んで、PR会社を悪者だと決めつけるのではなく、国の「正義」やメディアの報じる「善悪」は何か、そして自分たちの受け取る情報についても、考えるきっかけになる本です。元になったNHKスペシャル民族浄化」も力作で、授業で使っています。

旧知の河北新報編集委員で、ジャーナリストの寺島さんがアメリカ留学での調査をまとめて2005年に出版されました。「つながる新聞づくり」が地方紙の役割という指摘は、東日本大震災で注目され、寺島さんはブログ「Cafe Vita」を書き続ける実践を行っています。ソーシャルメディア時代にもつながる、大学や地域とつながった新聞づくり、リテラシー教育など、メディアが取り入れるべき事柄がたくさんあります。

調査報道で新聞協会賞を2度受賞した毎日新聞大治朋子記者によるアメリカのメディア状況のルポ。メディア激変の中で働く当事者として、メディア企業の幹部、NPO、ジャーナリズムスクールの教員に、疑問をぶつけていくスタイルなので読みやすい。元日本経済新聞記者でフリージャーナリスト牧野洋さんのメディアのあり方を変えた 米ハフィントン・ポストの衝撃』もあります。

 

こうやって7冊紹介すると、自分がルポルタージュやノンフィクションといったジャーナリズム作品より、メディアの社会的役割や課題、伝えることの責任や矛盾、権力や組織との関係に強い関心があることが分かります。もし、取材結果をまとめたもので一冊と言われたら日本で初めて行われた和田心臓移植を取材した共同通信の『凍れる心臓 』を押します。

 

【これまでの課題図書】


藤代ゼミ課題図書「変化するメディアを知る7冊」 - ガ島通信


藤代ゼミ夏休みの課題図書「考える力をつける4冊」 - ガ島通信

あっという間に読めるけど一行ごとに面白い『「ない仕事」の作り方』みうらじゅん著

文藝春秋の方から頂いたみうらじゅんの『「ない仕事」の作り方』。テレビに出て変なことを言ったり、雑誌でよくわからない連載をしている人だなあ、ぐらいの印象だったのですが、すいませんでした。真面目に書くと、ゆるさの裏に努力有りということだと思いますが、その努力というのが半端ないのです。

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

 

本にはみうら流、「そこがいいんじゃない!」とどんなに下らないものでも、面白さを自分で見つけ、そして好きだと思い込み、編集者を接待して売り込み、周囲を巻き込んで、世に出して仕事にしていくノウハウがたっぷり詰まっています。ここまで書いて良いのか?というぐらい詰まっています。

書かれてるアイデアや名付け(ゆるキャラとかマイブームがみうらさん作で流行ったもの)のほとんどんが、まったくと言って良いほど世の中に採用されていません。例えば…

  • 親孝行は照れくさい→親コーラー、エナリスト
  • 暴走族を格好悪い名前にしたらなくなるのでは?→オナラプープー族
  • ぐっとくる海士→AMA(エーエムエー)

こんな恥ずかしい言葉をつくって流行らなかったら、心折れると思うんですが、それでもみうらさんは「ブームになればいい」と次々と言葉を作り出していくのです。その飽くなき執念を支えるのは「ブームは誤解から生まれる」という確信。そのために自分を「絶対に流行る」と洗脳する…面白いので、あっという間に読めてしまうのですが、それは孔明の罠。面白エピソードの間にはさまれたノウハウの中で一番凄いと感じたのは

  • 就職試験に落ちた後、誰かの原稿が落ちるかもしれないと考えて知り合いの編集部に出入りするようにしていた

というエピソード。なんというセコさ、マメさ。この本は、ゆるーく面白い話題を散りばめて「そこがいいんじゃない!」と読者が簡単に思えるようにして試しているんだ(確信)。笑いながらすかっと読むもよし、丁寧にノウハウを拾うもよし。とりあえず、よくわからない名前のチームを作って活動しようと思います。