ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「ソーシャルメディア論」出版記念イベント:ソーシャルメディアをどう教えるのかを行います(終了しました)

10月に「ソーシャルメディア論: つながりを再設計する」を出版しました。本の表紙にも書いているように「ソーシャルメディア論」の教科書としてまとめたものです。

『ありそうでなかった「ソーシャルメディア論」の教科書。「ネットは恐ろしい」で終わらせず、無責任な未来像を描くのでもなく、ソーシャルメディアを使いこなし、よりよい社会をつくっていくための15章。』

出版を記念して12月19日に「ソーシャルメディアをどう教えるのか」と題したイベントを法政大学で行います。著者による講義時のポイントを紹介する5分のライトニングトークと会場からの質疑に回答するQ&Aがあります。

対象は、高校、大学、大学院、企業やNPOなどでソーシャルメディアに関して教える機会がある方が前提となりますが、もちろん、書籍の理解を深めたいという方の参加も歓迎です。

この本は情報ネットワーク法学会の研究会での議論をベースにつくられていますが、著者が揃う機会は研究会の際にもありませんでした。執筆者には各分野で注目の人材が揃っているので貴重な機会です。

本を購入して持参してください。できれば事前に目を通して頂けるとありがたいです。

ソーシャルメディア論: つながりを再設計する

ソーシャルメディア論: つながりを再設計する

 

【イベント概要】

開場:14時 開始:14時30分 終了予定:17時

場所:法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎3階 S306教室

参加条件:申し込み不要。「ソーシャルメディア論」を持参して下さい

14時30分:本の狙い、使い方

14時40分:著者による講義時のポイント紹介ライトニングトーク(各5分)

16時:質疑

17時:終了

登壇者(担当分野、所属)

木村昭悟 (技術、NTT研究所)

一戸信哉 (法・教育、敬和学園大学

伊藤儀雄 (ニュース、Yahoo!JAPAN)

山口浩  (広告・人、駒沢大学

工藤郁子 (キャンペーン、マカイラ)

小笠原伸 (都市、白鴎大学

新志有裕 (権利、弁護士ドットコムニュース)

小林啓倫 (モノ、日立コンサルティング

生貝直人 (共同規制、東京大学

五十嵐悠紀(システム、明治大学

藤代裕之 (歴史・メディア、法政大学)

主催:情報ネットワーク法学会デジタルジャーナリズム研究会・ソーシャルメディア研究会、法政大学藤代裕之研究室、共催:法政大学社会学研究科

以下はチラシです。

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ノーベル賞受賞を「異色」の経歴で終わらせないように

ノーベル医学生理学賞に輝いた北里大学特別栄誉教授の大村智さんの経歴が話題となっています。

『山梨大を卒業し、都立墨田工業高校の夜間部で教員として勤めた。昼間の仕事を終え、真っ黒に汚れた手で勉強に励む教え子を見て「俺も頑張らないと」と一念発起、大学院に通って研究者を志した』(おめでとう、智おじさん)

mainichi.jp

このような話を美談、特別な出来事で済ませるのではなく社会に「仕組み」として残す必要があります。学びたいと思った人が、どのような立場でも、年齢でも学ぶことが出来る多様な教育の仕組みと、トップまで繋がるルートがあることが大切です。

大村さんは農家を継ぐはずが、「大学に行くか?」という父親からのチャンスをつかみ、次は自分で夜間大学院に通い、自分でスポンサーを探して企業から研究費を獲得し研究を継続しました。

農家として美味しい食べ物を作ったかもしれないし、高校の先生として素敵な人生を過ごしたかもしれません。人生は何が幸せかは分かりません。ただ、学ぶ場が適切に大村さんに用意されなければ、ノーベル賞はなかったでしょう。

言いたいことは農家も、高校の先生も、ノーベル賞も、地続きだということです。高校時代の目標が、将来の可能性を狭めてしまわないようにしなければ、ならないのです。

ノーベル賞受賞者の出身大学を見ると、山梨だけでなく、埼玉、徳島、神戸など旧帝国大学(旧帝)以外の大学も頑張っています。博士号は旧帝での取得割合が増えますが、学部で学問の基礎力、探究心が育まれなければ、ノーベル賞にはたどり着かなったでしょう。

地方大か旧帝か、国立か私立か、文系か理系かという問題ではなく、大事なことは学問の裾野を広げることにより、頂点を高くするのが大事ということを示しているのではないでしょうか。

周囲の大人は人の可能性を見つめ、チャンスを用意するのが役割です。最近は大学を役割別に分けようという議論もありますが、職業訓練を行なう大学では学問への基礎力、探究心は生まれないでしょうし、何より学生の可能性を信じてないように感じます。若者は、何者でもない、だから何者にでもなれる。

若い人にはチャンスを掴んでもらいたいと思います。繰り返しますがノーベル賞は別世界の話ではないのです。チャンスを活かし、次はつかむように努力することが若い人の仕事です。

チャンスは一度は誰もが与えられますが、その次は掴みに行く努力をしないといけません。ラグビーの日本代表は朝5時からタフな練習をしました。人のしていない努力をすれば、勝てないと言われていた相手にも勝てるのです。ですが、チャンスは一度つかんでからが本当の勝負です。南アフリカには勝ちましたが、スコットランドには負け、そこから立てなおしてサモアに勝利したラグビー日本代表は、素晴らしかったと思います。

いま、日本の大学は、学びたい時に学べる、知の基礎体力を養う場所ではなくなりつつあります。さらに、授業料は上がり続け、仕送りは下がっています。保護者が「大学に行かせたい」と思っても、本人が「働きながら学びたい」と思っても、大変難しい状況になってきているのです。現実は、異色のノーベル賞が出る可能性をひたすら小さくしていっているのです。

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 教育は人の可能性にかけることが最大の役割です。チャンスを出来るだけ社会に広く用意することが大切です。

大学生の中には、厳しい授業やゼミに、「なぜこんなことをやるのか」「もっと楽に単位がほしい」と思っているかもしれません。教員は学生の可能性を信じているからこそ、高い目標を掲げて叱咤激励しているのです。

ですが教員は、チャレンジを促すことまでしか出来ません。それはもどかしいものですが、「扉を開く」のは自分自身です。何よりも大切なことは、本人が自分の可能性を信じることです。自分を信じなければ伸びていくことはありません。

今日も課題をやったり、どこかで残業をしたり、している私に関わった学生やOG・OBに。そして学生を信じ、日夜指導している先生方に、心を込めて。

 

秋晴れの多摩キャンパスにて。

 

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『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』の出版は、東京中心のメディアへの挑戦でもありました

法政大学社会学部藤代ゼミでは、ローカルジャーナリストの田中輝美さんとともに、島根で活躍する「風の人」を取材する活動「風の人プロジェクト」を年始から行ってきました。8月18日にいよいよ『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』というタイトルで発売されます。実はこのプロジェクト、東京中心のメディアへの挑戦でもあるのです。

 

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

 

 企画が通らなかった「風の人」本

本のタイトルにもなっている「風の人」という存在に注目したのは、2011年に起きた東日本大震災の活動経験がきっかけでした。被災地で出会いソーシャルメディアつながった人たちが、連携しながら他の地域の課題や社会問題に取り組んでいるのを見て、場所を超えた面白いネットワークが生まれているなと感じました。

 徳島の神山町美波町、岡山の西粟倉村、島根の海士町などは、地元のメディアを飛び越えて他地域とつながり、感度が高い人が訪れています。「食べる通信」のような地方と都会をつなぐ新しいメディアも登場。このような状況を日経新聞電子版の連載にまとめました。

 

www.nikkei.com

さらに、日経新聞の協力で、美波町で高齢者のタブレット使用のサポートを行う活動拠点「ITふれあいカフェ」を立ち上げて高齢者向けの製品開発事業を開始していた奥田浩美さんと食べる通信の編集長高橋博之さんとイベントも行いました。 

イベントの反応も良く、地方創生が話題になっていたこともあり、ローカルジャーナリストとして独立した田中輝美さんと相談して、全国の「風の人」を取材して書籍にしたら面白いのではという話になり、いくつかの出版社に相談してみたのですが、企画は通りませんでした。

たまたま話した部門やタイミングが悪かっただけかもしれませんが、出版業界に詳しい知人に聞いても、確実に売れる本(嫌韓・中関連や自己啓発系など)、これまでに(売れた)本を出している書き手、ソーシャルパワーがあって(出版社が何もしなくても)売れそうなもの、しか企画が通らなくなっているという状況になりつつあるということでした。マス的なメディアの限界を感じることになったのです。

 自分たちで本をつくろう

「風の人」は知ってもらいたいけれど、たくさん売るために無理に煽って変な本になるのも嫌。地域を取り上げた本は、良い意味でも悪い意味でも東京の人たちの都合のよい本になって、地元の人たちから「なんか違うなあ」と言われるようなものにもしたくない。地方出身者として「地方への幻想イメージ」のようなものが、ねじ曲げていると感じることもありました。

そこで、田中さんと相談して、自分たちで出版するためにクラウドファンディングに取り組むことにしました。開始時点では出版社は決まっておらず「クラウドファンディングが盛り上がって成功すれば、どこか出してくれるのではないか」という楽天的な話をしながら、自分たちでデザインして、印刷し、手売りすることもあり得ると腹をくくったのです。

 

faavo.jp

 

田中さんによると島根では「風の人」と言える人が、各地に点在して全国から注目されつつあるということでした。海士は既に成功事例として知られていましたが、江津や雲南、奥出雲で、面白い人がいる、全国の「風の人」から島根の「風の人」にフォーカスを集中することにしました。

田中さんと藤代で書くという選択もありましたが、取材はゼミ生が行うことにしました。地方からのゼミ生もいれば東京でずっと暮らしているゼミ生もいるため、地方の視点、都市の視点、どちらも取り入れることで新しい発見が生まれることを期待しました。

1月にゼミ生にプロジェクトについて説明。インタビューの事前調査を進めるとともに、書籍化する費用を検討するように伝えました。

ゼミ生が、図書館から自費出版の本を借りたり、ウェブで調べたりして出した結論は「出版は儲からない」という現実でした。「利益で焼き肉も食べられない…」。

ゼミ生にはゼミ費から取材経費を借りてもらい、本を売って返してもらうことにしました。法政大学メディア社会学科には将来「出版社に行きたい」という学生もいるのですが、メディアを作ることの難しさ、売っていくことの大変さを身を持って感じるプロジェクトになりました。

田中さんのパワーで、FAVVOは早々と目標を達成。しかし、出版社を探すのは少し手間取りました。企画の趣旨を理解して、ただ本を出す、だけでなく一緒に本を売るところまで取り組んでくれるところ。できれば地方、島根の出版社が良い…

伴走してくれる出版社

こんな無理な条件でしたが、ご縁があり島根のハーベスト出版さんが引き受けてくれました。編集者は、東京まで来て「学生時代に本を出すなんてできない。一生懸命取り組んで」とゼミ生にアドバイスをくれました。藤代が島根に行って田中さん、編集者と一緒にタイトルも考えました。

島根での取材、原稿の執筆、ゲラの確認… 出版されるか、自分たちでつくるかもギリギリまで分からない。不安定な状況で、7ヶ月の間に多くのことがありました。ゼミ生は最後まで粘り強く取り組み、8人のインタビューのうち7人をゼミ生が担当することが出来ました(1本は田中さん)。いいタイトルが決まり、素敵な表紙が出来上がりました。

第一弾として以下のイベントを行います(イベントは終了しました)。最近はメディアのイベントは東京でたくさん開かれていますが、地域を面白くするローカルメディアの実践者が集結して話すイベントはとても少ない。書籍付きチケットもありますし、ハーベスト出版の編集者もやって来てくれる予定です。

 

peatix.com

 

改めて 活動を支えて頂いた皆様、ありがとうございました。これから書籍をより多くの人に届けるために、他にもイベントなどを行っていきます。ゼミ生の目標は、取材経費を返し、打ち上げで焼き肉に行くことです。本を手にとって頂いたり、イベントに参加して頂けるとありがたいです。どうぞよろしくお願いします。

研究室のウェブサイトに「風の人」プロジェクトの特設ページをつくりました。

 

いまどきメディアへの憧れだけでメディア社会学科を志望している時点で死亡フラグが立っている

先日、西田亮介さんが、大学のクラスで『AERA』誌を知らず、雑誌を買っている人がいないとツイートしたのに対して、下記のようなツイートを行いました。2013年から法政大学社会学部メディア社会学科で教えているわけですが、一番驚いたのが 「メディア志望です」という学生が、新聞や書籍を読まず、場合によってはテレビもあまり見ず、ドワンゴ角川書店の合併といった業界を揺るがすニュースも知らないということでした。

 

 

「具体的にメディアというと?」と聞くと、「漫画を読んでいるので、出版社に行きたい」 と答える学生がかなりの割合でいます。ですが、出版社が手がけている雑誌も書籍も読んでない。もちろん、出版業界が抱える課題(本が売れない、電子書籍化など)にも関心がありません。

スマートニュースやNewsPicksのようなスマートフォン向けのニュースメディアだけでなく、ヤフーすら「メディア」と捉えておらず、自分たちの進路の範疇に入ってないのもかなりの驚きでした。メディア=マスメディア(テレビと漫画)であり、漠然と華やかそうなイメージに憧れているだけ、なのです。

 

 

大学の教員となって出身の新聞業界以外、テレビや出版の方とも話すことが増えました。「面白い学生が採用で来なくなった」との嘆きは既存マスメディア業界全体に言えることのようです。採用担当の方から「藤代さん学生を紹介してくれませんか」と言われることもあります。古いメディア観を持った学生が、採用試験を受けるのだから、まあそうなるようなあと…

ツイートに対して、「昔もメディアに憧れて志望した」という意見も見られましたが、以前はメディア業界はそれなりに時代の先端だったし、マスメディアに入らなければ多くの人に情報を伝えることはできなかったので、好奇心を持った人、社会への問題意識を持ち、多くの人に伝えたいという人もいたわけですが…

 

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ソーシャルメディアの登場によって誰もがメディアを持てる時代。表現に関心がある学生は、ブログを書いたり、動画サイトで中継したり、フリーペーパーをつくったり、しています。社会問題に関心がある学生は、被災地や過疎地で活動し、シェアハウスをつくり、クラウドファンディング資金を集めています。これらの学生は好奇心も旺盛です。そういった学生はメディア社会学科に来なくても、メディア的活動を行っているわけです。

メディア志望といいながら、ソーシャルメディアは仲間内でのやりとりに使い、クラウドファンディングは知らない、社会の問題も関心が乏しい、好奇心がないのでメディア業界が直面している課題も知らない。でも、メディア業界の人と知り合って威張っている。みたいなナゾの意識高い系学生がいてトホホな気分になります。

誰もがメディアを持てる時代に、メディアに入ることが目的化しているようでは、その学生の将来が相当危うい。そこで、最近では私が担当する高校での模擬授業や進学ガイダンスでは学科の説明の仕方を変えるようにしました。 

 

 

法政大学メディア社会学科では、今年度の新しいカリキュラムからメディアを学ぶ講座とプログラミング系の科目を組み合わせて履修することを推奨するように変更しました。ワークショップ型で次世代のメディアを考える「ウェブジャーナリズム実習」もスタートします。

代ゼミは厳しいと言う学生もいますが、「メディアを使って社会問題を解決する人材をつくっている」もしくは「メディアの未来を切り拓く面白い学生がいる」と言われるように(学生にとっては変化が激しいメディア社会を生き抜く基礎力を身につけられるように)取り組んで行ければと思っています。

ゼミ生が島根で「風の人」を取材中です

ローカルジャーナリストの田中輝美さんとともに、島根で活躍する「風の人」を取材し、書籍化して、販売する藤代ゼミの春休みの活動「風の人プロジェクト」。田中さんがシェアオフィスを構える松江駅近くの家具屋「flat style」でインタビューを行いました。

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インタビュー前の打ち合わせ。ウェブ上や書籍で事前調査した資料を復習です。

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川沿いの素敵な空間には家具や古いカメラ、玩具がディスプレイされています。「flat style」の松崎さんによると家具のリメイクやオーダーだけでなく、最近は古民家改修などの依頼も多いそうです。

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夜は以前からつながりがあった奈良井さんや三浦さん、県職員の方と交流。地域の課題やUIターンについて教えて頂きました。島根のみなさんに支えられながら取材活動を進めています。

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田中さんのチャレンジ「島根発ローカルジャーナリストの挑戦!“島根の面白い人”紹介本を作りたい! - FAAVO島根」は開始から24時間で目標を達成する大きな反響です。引き続きご支援よろしくお願いします。



藤代ゼミで「風の人」を書籍化するプロジェクトを始めます

代ゼミの春休み大作戦の始まりです。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の仲間で、ローカルジャーナリストの田中輝美さんと一緒に、島根で活躍する「風の人」を取材し、書籍化して、販売します。自分たちで「メディアを創る」ワクワクするチャレンジです。

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ゼミでは夏に合宿をした栃木県足利市の「おもしろい」を紹介した冊子「足利のたからさがし」を制作。見せ方や紙質にもこだわりましたが、販売までは至っていませんでした。

今回は「売れる本」をつくるのが目標です。ゼミ生は取材経費、印刷代、などを計算し、事業計画を検討。田中さんから示された取材候補者を図書館やネット、ソーシャルメディアを使い、インタビューシートを作ってきました。ゼミ生に多くのことが任されています。

書籍化といっても、出版社も決まっていなければ、お金もありません。売れるかも分からないプロジェクトですが、出来ると分かっている事はつまらない。困難や不安に立ち向かうことで、人はパワーが出るし、ワクワクが生まれてきます。

まずは、みんなで積み立てたゼミ費を取材費用に当てています。売れなければ赤字。頼れるのは自分の発信力。ゼミ生はソーシャルメディアを使い、プロジェクトの進行を発信するようになりました。

今日、市ヶ谷の研究室で最後の打ち合わせを行い、夜行バスで島根に出発しました。お揃いのパーカーを買い込み、誕生日プレゼントしてくれました。まだ、何のマークもワッペンもついてませんが、これからゼミの思い出がパーカーに印されていくはずです。

田中さんは、取材費用、印刷費用をクラウドファンディングで集めるチャレンジを行っています。開始半日で50%の支援が集まっています。もちろん、この費用だけでは出版はできないのですが…書籍を確実に入手できるのは、このクラウドファンディングですので、ご支援なにとぞよろしくお願いします!


島根発ローカルジャーナリストの挑戦!“島根の面白い人”紹介本を作りたい! - FAAVO島根

テーマとなっている風の人は、2014年10月の記事で紹介した、ソーシャルメディアでつながり、地縁でもなく、血縁でもない新しいつながりで地域を創っていく人たちのこと。


地域創生のカギ握る ネットでつながる「風の人」 :日本経済新聞

書籍化しようと企画書をつくり、いくつかの会社にも検討頂いたのですが、出版には至りませんでした。なぜ、ゼミ活動で、そしてクラウドファンディングを選んだのかも、これから書いていきたいと思います。

なぜ小学4年生を偽装した政治キャンペーンはダメなのか

衆議院議員選挙について、「どうして解散するんですか?」と小学4年生が問いかけるウェブサイトが、政治系のNPO団体代表の大学生による企画だったことが明らかになり、閉鎖に追い込まれました。批判の一方で、「なぜ問題なのか」「結果的に話題が広がったから良い」「ウソをウソと見抜けない利用者が問題」といった声もあります。しかしながら、立場を偽り情報を発信することは、社会的に大きな問題なのです。

 

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なぜ、立場を偽った情報発信はダメなのでしょうか。それは、情報の信頼性が損なわれると情報受信のコストが膨大になるからです。人は、受け取る情報を「だいたい正しい」と思って行動しています。情報が間違えていたり、騙されたり、することも有りますが、あくまで例外でしょう。

もし、情報が不確かな社会が前提となれば、いちいち確認して行動していく必要があります。テレビで紹介するイベントはねつ造?新しい新幹線が開通するのがウソ?いや、その放送は、テレビ局を装った企業のウソ広告だった、ウソが広がり始めたらきりがありません。

マスメディアの偽装やねつ造が批判されているのは、普段接しているニュースが間違っていたら、どの情報が正しいか、分からなくなるからです。だから、マスメディアは厳しく批判されるのです。

ネット、特にソーシャルメディアでは、マスメディアも、そこに所属する記者も、個人の発信者もフラットに発信できます。 新聞は新聞社、テレビはテレビ局しか情報を発信することは出来ませんが、ネットは異なります。

「ネットは不確かな情報ばかりでしょう」と言うひとがいるかもしれませんが、ネットからのあらゆる情報を、一つ一つ疑って、確認していることはないでしょう。フェイスブックツイッターで流れてくる情報は、友人や知人、自分がフォローした人によるものですから、それを間違ったものとして捉えるのは、人間関係にも影響を与えそうです。

 今回の嘘によって、次に小学生が政治サイトを作っても、すぐには信用されないということも起こるでしょう。この大学生が所属していたNPOや大学も、「他にもやっているのではないか?」と思われてしまうかもしれません。「また誰かがやっているかも」どんどん疑いの目が広がっていきます。何重ものチェックが必要になってきます。 

だからこそ、マスメディアであろうと、一般の人であろうと、大学生であろうと、偽装の情報発信は許されるものではないのです。

今回のケースが悪質だったのが、ネットユーザーの検証が進み、疑惑が広がった際に、一度否定したことです。指摘されてすぐに、事実を明らかにしていれば、多くの人たちが立場を偽った情報を受け取らなくてすんだかもしれません。

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ネット上には様々な意見がありましたが、とても残念だったのは、ネット企業の方から「今回の件は些細なものに思える」との反応があったことです。ネット企業が自らの足場であるネット空間において、偽りの情報発信が「些細なこと」なのだとしたら、それはとても無責任に思えます。

ソーシャルメディア以前は、新聞やテレビは一部の人しか、多くの人に情報を発信することは出来ませんでした。大学生でも、高校生でも、自分の考えを世に問うことが出来るのです。せっかく手に入れた情報発信手段であるソーシャルメディアを自ら信頼できない「場」にしている。情報という日々接する飲み水に毒を入れる行為に等しいのです。

この件について「天才やスーパーと言われた学生が…」「大人は若者を応援すべき」といった議論と結びつける人もいますが、それについては清水亮さん、常見陽平さんが、書かれている記事を紹介しておきます。